西村ミツル・梶川卓郎「信長のシェフ 10」(芳文社コミックス)

第10巻は武田信玄亡き後の織田と足利将軍家との最後の闘争と朝倉・浅井が殲滅される戦いの発端のところまで。

前半のスッポンの料理のあたり、改元が織田と将軍家との闘争の主題となっていて、足利義昭が即位時に改元した「宝亀」がキーになるのだが、一世一元に馴染んでいる当方としては、改元による勢威の表し方とか、改元のもたらす効果といったあたりは少々感覚的に疎い。

もうひとつ、感覚的に実感が薄いのが「砂糖」の有り難さ、貴重さ。

こてこての砂糖漬けの生活となっている我々には、山科中納言がころりと寝返るところや「菓子」を媒介にした接待・折衝の妙は、痒い所をコートの上からさすっているような感じでなんとも体感の外にある。

歴史物を読んでいて隔靴掻痒の感があるのはこんなところで、現在と違う風習とか廃れた風俗の重みとかは、その時代に生きていないと体感で理解できないのが正直なところで、このへんをうまく翻訳して、現代の感覚に置き換えることができるかが歴史ものの出来にかかわるといっていい。

この辺は活字で表現する小説の場合は、どうしても注釈や断り書きに頼ってしまい、うまくないのだが、コミックの場合は視覚に訴えるとことができるので一日の長があると感じる次第。

ストーリー的に、この巻は戦闘場面はあるにしても織田と足利将軍家の戦いにならないような戦いぐらいなので、静的な展開の巻。そこここの小技を楽しむ巻であるといえるかな。

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