女子小学生”奈都”が旧家の謎を解く — 大崎 梢「片耳うさぎ」(光文社)

「配達あかずきん」など本屋の成風堂を舞台にした書店ミステリーで人気を博した著者のジュブナイルっぽい作品。とはいっても、つくりはしっかりしているので、そのあたりは大人のミステリーファンもご安心あれ。

発端は、父親の事業がうまくいかなくなって、父親の実家(地元の名家で旧家であるらしい)に居候している、小学生の奈都が、週末までの数日間一人で、その家で暮らさないといけなくなったところから始まる。父親の実家だから、なんてことはないだろっていうのは庶民の浅はかさというもので、なんとも格式高くて過ごしにくいことこの上ない家であるらしい。そこで暗い顔をしていたら、クラスメートの祐太の「ねえちゃん」のさゆりが一緒に泊まってくれることになった、という設定。

その数日間で起こる事件というのは、ジュブナイルっぽい仕立てのせいか、殺人とかいった荒事はない。なのだが、旧家らしく隠し扉や階段の発見や屋根裏の探索から始まり、奈都のおじいさんの手紙やら、屋根裏に出没する謎の人物の出現やおばさんの出生の秘密や、この家の数代前に起こった毒殺事件の真相とかが絡み合うのと、奈都がこの家の人々に馴染んでいないせいか、誰が味方やら誰が何を企むつもりなのか、先が見えない状況を作り出しているのがこのミステリーの妙で、凄惨な事件はない割に不気味さを醸し出している。

でまあ、奈都とさゆりが共に過ごすのも4日間という短い期間の間に、旧家を揺るがした謎が解かれ、屋根裏の不審人物も、おばさんの秘密も明らかになるので、お手軽と言えばお手軽ではあるのだが、とてもリズミよく読ませるので、そのあたりは了としておこう。

ついでに最後の「エピローグ」のところで、さゆりの正体も明らかになるのだが、少々出来過ぎ感があるよな、と少しばかり腐しておく。なにはともあれ、大団円が用意されている、安心して読めるミステリーであります。

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