アメリカ方式の意見調整・利害調整の手法とは — ラリー・ドレスラー「プロフェッショナル・ファシリテーター」(ダイヤモンド社)

社内の打ち合わせに始まって地域振興の話し合いなどなど、会議の生産性の低さが一頃言われていたことがあったのだが、その効率を高め、利害を調整して結論を導く、プロとして注目を浴びていたのが「ファシリテーター」。

アメリカではファシリテーションを職業にするプロもいるようなのだが、ちょっと日本で

職業的に独立していくような感じはしない。とはいっても、会議やら調整のための話し合いやら、様々に利害調整や意見対立をまとめないといけないことは洋の東西を問わないわけで、当事者がその任に当たらなければいけない日本のほうが、よりファシリテートの能力は、ビジネスマン個々が身につけておかないといけないものなのかもしれない。

構成は

序章 炎上する会議

パート1 ファシリテーターの修羅場

第1章 炎を味方につけよう

第2章 「炎の達人」としてのファシリテーター

パート2 修羅場を切り抜ける6つの流儀

第3章 自分の状態変化に敏感になる

第4章 「いま、ここ」に集中する

第5章 オープンマインドを持つ

第6章 自分の役割を明確に意識する

第7章 意外性を楽しむ

第8章 共感力を養う

パート3 プロフェッショナル・ファシリテーターになるために

第9章 日常的に行うトレーニング

第10章 ファシリテーションの事前準備

第11章 修羅場にどう立ち向かうか

第12章 振り返りと休息

パート1、パート2がおおむねファシリテ−ションの技術論、パート3が心構えと自薦準備といったところなので、「ファシリテ−ション」のテクニックを身につけようとする人は向けにパート2中心にレビューすると、ファシリテートの基本は

自分の状態や変化を意識の中にとらえておかないと、見たこと、感じたこと、韓挙げたことのすべてを「真実」だと思いこんでしまい、偏った判断をすることになる(P61)

ということを念頭に

自分の役割を誇示したり気をみおんだりすることなく、仕事に集中しなさい。あなたが「こうあるべきこと」ではなく「実際に起こっていること」をファシリテート

(P88)

し、

自分とは違う見解に耳を塞ぐようになると、プロ失格である。自分の認識・判断・推測が正しいと思い込み、「自分の想定どおりになった。これが結論だ」と安易な判断を下すようになる。・・それではせっかくのグループの力を引き出せずに終わってしまう

といったことがポイントのようだ。

とはいっても、友好的な会議ばかりではないことはアメリカでも同様のようで、

オープンマインドを保つための最後のポイントは・・他人に常にオープンでいてはいけない、というものだ。拒絶する、うろたえる・・といった態度にみんなが陥っているときには、それを受け入れるのではなく、希望と可能性を持ち続けることだ(P108)

とか

意見が厳しく対立し息詰まるような会議でも、自然体で柔軟に現場に対応するには・・3つの能力(「こだわりを捨てる」「遊び心を持つ」「必ずうまくいくと確信する」)を育てることが大切だ(P145)

といった、危機管理的な忠告が混じってくる。

利害対立や意見対立を第三者が間にたって調整し、意見をまとめていく手法は、ワークショップなどで必要性はいわれるものの、日本的な「調整」の手法とはちょっと違っているためか。ファシリテーションも言葉だけが踊っているような印象を受ける。まあ、意見調整、利害調整ができれば、アメリカ的な手法にこだわることもない。本書も、アメリカのファシリテーションの手法の分析と割り切って、自らの調整方法や会議運営のテクニックに取り入れていくといった読み方をすればよいのでありましょうね。

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