大量の読書の秘訣は、「寝る前に1時間本を読む」を続けることか? — 出口治明『本の「使い方」』(角川ONEテーマ21)

ライフネット生命の創業者の出口治明氏の読書論。もともと氏は、かなり読書家として知られているし、「1行たりとも読み飛ばしてはいけなう」という結構人を恐れさせる帯もついているので、その読書法や大量の読書をするコツもさぞかし、と思ったのだが、意外にも、

本は、移動時間や就寝前の1時間、週末に読んでいます。趣味として読む場合と、まとまった知識を得るために読む場合があります。  読書は私の趣味そのものなので、功利的な目的を考えずに、ただ「楽しい」「おもしろい」という理由だけで読む場合がほとんど

というところにちょっと驚く。

構成は

1章 本とは「何か」ー教養について考える

2章 本を選ぶー「おもしろそうな本」という鉄則

3章 本と向きあうー1行たりとも読み飛ばさない

4章 本を「使う」ー著者に左右される人、されない人

5章 本を「愛する」ー自分の滋養、他者への架け橋

となっていて、「本」の隅々まで味わってやるぞ、という「読書家」の心意気が反映されているようでもある。「読書論」というのは、ちょっと間違うと、スノッブの風味が強くなすぎて、うっぷ、と胸焼けがしてしまうものだが、本書がするすると読めるのは、そのオーソドクスさによるのかもしれない。

そのあたりは

私の場合、新しい分野の勉強を始めるときは、 ①関連書籍を「7~8冊」手に入れる ②「厚くて、難解そうな本」から読み始めて、輪郭をつかむ ③最後に「薄い入門書」を読んで、体系化する ④本で学んだあとは、実際に体験してみる  というマイルールを決めています。そして、一旦マイルールを決めたら、あとは迷いません。ルールのとおり行動するだけです。

私は、目次をほとんど読みません。  繰り返しますが、私は、本を読むことと、人の話を聞くことは同じだと考えています。人の話には、目次がありません。聞き飛ばすこともできません。 「この人の話、おもしろそうだな」と思ったら一所懸命聞けばいいし、途中で「なんか、おもしろくないな」と思えば、話を切り上げてしまえばいい

といったところにも現れているといえそう。

もっとも

私は、一般にビジネス書はあまり読みません(実務書は別です)。ビジネス書があまり好きでないのは、 ①ビジネス書は、後出しジャンケンである ②ビジネス書は、抽象化されすぎている  という、おもに2つの理由からです

成功体験は、いくらでも後づけで考えられます。でも、歴史書や優れた小説には、成功した人間だけでなく、失敗した人間も同じく克明に描かれています。ひどい人とか、いいかげんな人とか、生身の人間が等身大で描かれているので、後出しジャンケンよりもはるかに役に立つ、というのが、私の基本的な認識

と、読むなら「歴史書」と力説されているところには、あれこれとビジネス書を読んで簡単に感化されてしまう当方としては赤顔するしかない。

まあ、幸いなことに読書の本質は

人、本、旅には、それぞれ一長一短があって、どれがいい、どれが悪いと決めつけられるものではありません。大学の4年間を「本を読んで過ごす」のと、「世界を放浪して過ごす」のとでは、どちらが賢くなるのか、それはわかりません。その人次第です。「旅は大好きだけれど本は大嫌い」という人は、旅を続けたほうが、賢くなるはずです。

人、本、旅で、どのジャンルの教養を身に付けたらいいのか、というと、 ・自分の興味が持てるもの ・自分の好きなもの  から始めてかまわないと思います。好きこそものの上手なれで、興味が持てるジャンルであれば、続けることも、工夫することもできるでしょう。好きなものを究めるほうが、何でも身に付きやすいと思います。  一方で、他人に薦められたら、騙されたと思って試してみる、という方法もあります。

ということであるらしいので、力を抜いて、好きなジャンルを、とにかくたくさん読んでいくというのでよろしいようでありますな。

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