新聞は”読み飛ばす”だけが能ではない — 池上彰「池上彰の新聞勉強術」(文春文庫)

以前レビューした「新聞活用術」の対といっていいのが、この「新聞勉強術」。エピローグのところをみると社会人にはじめてなるか。あるいは就活中の学生さんたち向けかなとも思うのだが、「新聞」に親和性があって、なおかつ聖域感があるのは、当方のような中高年であろう。

構成は

プロローグ 一本の新聞記事が世の中を動かす

第1章 「ニュースを見る目」は、新聞で養う

第2章 まず、何から読んだらいいのだろうか

第3章 速読から読解まで 池上彰流・新聞の読み方作法

第4章 「新聞の読み比べ」で身につく情報力

第5章 ネットにテレビに! 池上流・メディアミックス新聞術

第6章 知れば知るほど面白い、新聞の取材現場

第7章 新聞の情報整理術&知的活用術

エピローグ 新入社員の新聞勉強術

となっていて、新聞から情報収集を始めたばかりの学生からスクラップにはまり込んだ人まで、かなり幅広い「新聞好き」をレンジにおさめている。

こうした「新聞」の話となると、とかく新聞を褒めて、その神話化を図ってしまうことがあるのだが、筆者の場合、

数字が重要な記事を見つけたら、必ず他の新聞の見出しと見比べる。・・事実の中に盛り込まれた「主観」を見つけ出すことから、私達の新聞勉強術がスタートする。(P30)

社会の多数が「けしからん」と怒っているときに「ちょっと待てよ」ち、「アナザービュー」(異なる視点)を持つ姿勢が大切(P37)

「アナザービュー」とは「本当にそうなのか」を、別の角度から考える癖をつけること(P38)

といった感じで、「新聞」そのものを疑ってみる、違うポジションに自分を置いてみる大事さを主張するところが、その誠実さを現しているというものか。

で、本書の場合、「新聞」のあらゆる側面をとりあげているので、どういう読み方をしてもよいのだが、当方としては、新聞取材の方法論や新聞報道の優秀性というよりは、その使い方の方に関心があって、例えば

自分でも気づかない自分自身の関心は、デジタルでは決して発見できないのです。

新聞をスクラップするために必要な記事を探していると、その横に思いもよらないような記事を発見することがあります。

そんなとき、まったく関係ない記事同士が結びついて、いままでにない発想が生まれることがありました。スクラップは”新たな発見”の喜びを与えてくれるのです(P221)

新聞に文章だけで記述されている内容を自分なりに図解してみるのです。

図解しようとすると、その問題について深い知識を持っていないと図解できないことに気付きます。そこから、何を学べばいいかがわかります。

こうして理解できたら、図解します。

そのうえで、その図解を今度は言葉で表現してみるのです。

この言葉での表現こそ「まるで図解をしてくれるようにわかりやすいですね」と言ってもらえる説明になるのです(P223)

といったところは、新聞を使った発想の手法、表現力を磨く手法として「ふむ」と思わせるし、

スクラップは、ひとつの事件を追いかける場合のように「この記事を切り抜かなければ」とテーマを決めて行う方法もありますが、どんなジャンルでもかまわず「これは面白いな」と思った記事を切り抜く方法もあります。

実は、このノンジャンルで切り抜くやり方が、意外な発見をもたらすのです。・・・自分自身がこれまで気づかなかった自分の興味・関心の分野が、次第に明確に姿を現してくるのです。(P230)

短歌や俳句でも、釣りやドライブであってもいいと思います。それを積み重ねておいておく。そしてときどき棚卸しをしてスクラップを見返してみると、いつのまにか、自分が本当に趣味にしたいものは何なのか、「自分探し」をすることができるはずです(P231)

といったところは、隙と時間ができた定年後に、それからの人生をうっちゃっていくものを見つけるに良い方法かもしれないな、と無芸大食の輩はつぶやいてみる。

さて、筆者のように五紙以上の新聞を購読して、スクラップするといったことは小遣いも限られている身としては難しいものではあるが、せめて、複数紙をとって、やってみると少しは賢くなれるでありましょうか?

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