政府から「働き方改革」が声高に言われるようになったな、と思っていたら、いつのまにか「生産性向上」の声に模様替えが始まっていて、いやいや、働き方改革と生産性向上は被さる所はあっても、同一ではないでしょ、とつぶやいてはみるんだが、当方の声が小さいせいか、あちこちには響かないというのが実態。
本書は、そんな小さい声を代弁してくれるような「働きやすい職場とは」、「嫌にならない職場とは」といったことを、おざなりの机上論ではなくて、分析的に提示してくるれる。
構成は
1章 飲み会が少ない職場は危ない
2章 「アドバイス上手」な上司が部下の心を折る
3章 なぜ運動部を経験していないと、心が折れやすいのか
4章 90分のメンタルヘルス研修で、不調者が増える理由
5章 心が折れない職場とは
となっていて、様々な職場の様相を示してくれながら、「心が折れない」職場の姿を明示してくれるつくりとなっている。
そもそも「心が折れる職場」とは
職場におけるコミュニケーションについて「部下からのホウ・レン・ソウが一番重要だ」という意識が強い上司がいて、部下との適切な関係を構築できれいないケースが多すぎます。
「部下からのホウ・レン・ソウが一番重要」ー。この意識をもっているということは、「報告・連絡・相談」を部下に任せて、自分からは能動的なコミュニケーションを図る気がないということだからです。(P24)
であったり、
長時間労働自体は、メンタル不調の「1つの要因」にしかすぎないと確信するようになりました。つまり、長時間労働イコール不調の原因ではなく、その根底にある「仕事との向き合い方」「仕事に対する意識の在り方」が根本的に重要なのです(P37)
や
「成果主義」というシステム自体が、メンタル面で問題を引き起こす直接の原因になっているとは考えられません。
(中略)
成果主義のどこに問題があるのか。それは多くの会社で、社員の働きをフェアに評価できていないこと、あるいは、制度の導入の動機が、単に人件費をカットするためになってしまっていることです(P51)
といったことであるらしく、よくいわれる労働時間といった外形的なものが要因ではなくて、職場の雰囲気、上司・同僚の雰囲気といったソフトなところが「心が折れる」「折れない」の分岐点であるようだ。
それゆえに
そもそも、最初から仕事をやる気がない人は、それほど多くはありません。それなのに、心が折れてしまう大きな原因の1つには、「自分の頑張りを見てもらえていない」と感じてしまうことがあります(P80)
人は基本的に「叱る」と「認める」のどちらか一方のストロークしか発しない人の言葉は、心を素通りしていきます。
日頃から自分のことを認めてくれる人から叱られると真摯に受け取ります。逆にいつも厳しい人から認められるとこのうえなく嬉しくなります。このバランスこそが大切なポイントなのです。(P81)
といったことや
外で趣味や様々な活動の場を持っていると、たとえ仕事でうまくいかなくても、趣味の場で承認を補うことができます。
(中略)
趣味の話とはいえ、このような承認を得る機会があれば、仕事で自信をなくすような出来事が続いても「自分は何をやってもダメな人間だ」と自分を全否定せずにすみます。つまり、プライベートで前向きな承認を得ることは、職場でもポジティブな影響をおよぼすのです(P121)
が、「職場に心を折られない」ためには重要なのだが
恐ろしいもので、無気力は怒りよりも組織の活力を失わせていきます。怒るというのは、なにかしら対象に対して期待を抱いていて、それが裏切られたという感情ですが、無気力は、もはや期待などまったくしていないという状態だからです(P57)
や
メンターはとてもいいシステムだと思いますが、それは「新入社員が困ったことを相談できるマッチングシステム」だからではなく、むしろ「メンター」という役割をはたすことで、その人が大きく成長できるからです。これを、実施する企業サイドが勘違いをして、「メンター制度は、新入社員のためだけにやるもの」と思ってしまい、メンターになる側に自らの成長を意識させるということを行わないため、結局、効果が表れないことが起きているのです(P182)
といった風に、まだまだ、職場全体でのメンタルヘルス対策が進んでおらず、
ストレスチェックがうまくいっていない企業には共通点があります。それは「担当者に任せきりである」ということです(P216)
といったことが大勢となっている日本企業の哀しさが露呈するのである。
さて、企業側の体制がどうこう、と泣き言を言っているだけでは、職場に「心をおられる」ばかり。
何かあったときに自分が立ち返ることができる原点を自分の中にはっきりと持っている人は、逆境に強く、心が折れにくいのです(P135)
とこちらも強く自衛手段をとっていくとこが大事なのかもしれないですね。
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