ビジネスの基本の「聞く」ということの真髄は? — 阿川佐和子「聞く力ー心を開く35のヒント」(文春文庫)

「今更」というおしかりの言葉を承知の上で、阿川佐和子さんの「聞く力」である。
すでに定評のある新書なので、あえて当方がレビューを、と思わないでもないのだが、新書というものは中には旬の時期が短いものがあって、当世の流行を解説したものはえてして賞味期間が短いもの。
その点、こうした「人間の力」「処世の術」といったことをテーマにしたものは愛じわ得る機関が長いもので、本書もそうした「息の長い」部類に属しているものと推察するところ。

構成は
1 聞き上手とは
2 聞く醍醐味
3 話しやすい聞き方
に章立てされていて、当然、表題の35の小目次があるんだが、例えば「面白そうに聞く」「相手の気持ちを推し量る」とか「相槌の極意」「相手の目を見る」などなど、そこまでレビューすると、ネタバレも甚だしいので、ここは大目次で止めておく。

この本が大ヒットした感想については、次作「叱られる力」で著者自体が分析はしてあるのだが、当方的に思うのは、「聞く」ということの難しさ、なぜ人に「聞いてもらえない」のか、といった「今を生きる人」の悩みにピタッとはまったということなのかな。

で、インタビュアーとして定評のある著者であるので、「聞く」上でのアドバイスは、とても深くて

聞き上手というのは、必ずしもデーブ・スペクターさんのようにビシバシ切り込んでいくことだけではないのではないのかもしれない。相手が、「この人に語りたい」と思うような聞き手になれなよいのではないか(P31)

とか

自分で「あれ?」と思ったことを率直に相手にぶつけると、それだけ相手の仕事に注視していることが伝わって、本当は他の資料が読み切れていないにもかかわらず、思わぬ話の広がりにつながることはままあります(P59)

などといった言葉には思わず「ほう」と唸らせられる。

で、なんといっても「聞く」極意は

私はそのとき、肝に命じました。
自分で決めつけてはいけない。こっちの話が面白いに違いない。・・・聞き手は勝手に決めつけることが、どんなに危険であるかを、その日、つくづく思い知りました。(P72)

「ただ聞くこと」それが相手の心を開く鍵なのです。・・・特に日本人にとって「相づち」は欠かせないもののように思われます。(P149)

といったように、日本人らしい「相手に沿う」といったtころであるのもしれない。

皆がインタビュアーとなるわけではないので、著者ほど「聞く技術」を磨く必要は薄いかもしれないが、ビジネスの場面で基本となるのは、やはり相手方の意向を「きちんと聞き」「正確に把握する」といったことが基本中の基本であろう。
ビジネスの作法の基本の書として、いつも側において、時折見返すべき貴重な本であるような気がしますな。

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