昔の定年ノウハウ本を、マイルドな「組織からの逃げ方」の仕方として読む — 江坂 彰「あと2年」(PHP研究所)

2005年の出版で、Amazonでも新刊の紹介はなく中古でしか手に入らないようであるし、直接には「団塊の世代」へ向けた「定年を迎える書」である。定年への手引書としては少々古びているのかもしれないのだが、当方的には、定年を前にした「仕事」や「組織」への向き合い方、という感じで読ませてもらった。
 
構成は
 
プロローグ 人生八十年時代の定年の迎え方
一 「妻と二人生活」が基本スタイル
二 モノより思い出
三 定年までに捨てるもの
四 あなたの住処はどこにする
五 熱中できる趣味を最低二つ
六 旅は定年後の必修科目
七 自分の健康法を持っている?
八 最後には貯金通帳をゼロに
九 仕事意外の友人をつくろう
十 好みの外食店を見つける
十一 物事を好きか嫌いかで決める
十二 しっかりと認めよう、体の衰え
十三 ゲートボールより若い友人
十四 親の世話をそうするか
十五 人生は起承転々で進むべし
エピローグ 団塊の世代へのメッセージ
 
となっているのだが、先述のように、今の若い世代のようにドライに「組織」に向き合えない「旧世代」に属する身としては
 
人によってはむずかしい立場にいる場合もある。
サラリーマンでソフト・ランディングに失敗した人たちを兄ると、役員直前で「はい、お終い」とやられた人が多い。
こういう人は自分も嫁さんも、会社を離れて生きる準備ができていない。
自分がもしもそんな立場になってしまったら、役貝と定年のどちらでも行けるようにしておくのがよい。
好き嫌いをはっきりさせながら、それをあまり目立たせない
といったあたりは、我が身に結構堪える言葉で、おもわず「そうか」と頷いた次第。
もともとサラリーマンを長くしてきた当方と同じような年代・環境の方は、高度成長の後のバブルとその後の冷え切った経済環境のどちらも経験してはいるものの、やはり組織の中で働いてきた人が多いはず、今の若い世代のようにフリーランスにもなかなかなる勇気もないが、それなりの一所懸命働いてきた、というところである。
ところが、年金の支給も心もとなく、働く期間だけは長くなりそうな気配であって、「うむむ」という思いにかられる時は、組織との付き合い方を、本書のようにソフトに替えていくというところが精神的にもハードルが低い。
 
それは
嫌いなほうは意思を明らかにせず、やらなければいいというだけの話である。
大事なことは、「好きか嫌いか」「自分がやりたいことか、やりたくないことか」の価価尺度を自分の中に持つという一点だ。
人生とはこういうものだと妙な結論をつけないで、起承転々で流れていけばいいではないか。
六十歳で人生の「結」に入ったなどと考えなくてもよろしい。
会社の定年と自分の定年は関係ない。
定年は人生が終わったのではなくて、階段で言えば「踊り場」だ。
といった風。どうです、これなら人目を気にするあなたもデキそうな気がしませんか。
なんにせよ、組織に属し、組織内で働くことが常態であった、当方と同じような団塊アフターの世代こそ、こういうソフトトランディング的な「組織からの逃走」の仕方が精神的にも楽でありそうですね

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