「会話力」は ”人間生活+出世” の基礎であるようだ — 斎藤 孝「すごい「会話力」」(講談社現代新書)

斎藤孝先生は、「◯◯力」という言葉を生み出す名人でもあって、今までも「雑談力」とか「語彙力」とか、思わず「えっ」と引き寄せられる言葉をつくり出してきている。
そういう著者の今回の「◯◯力」は「会話(力)」。
ただ今回は「会話」というちょっとありふれた言葉を使っているので「すごい」と「会話力」が融合して初めて気を引くかな、と思う次第。
で、その「すごい会話力」とは「交友(友人と良い関係を築く)」「仕事」「愛(恋愛し、結婚し、家族を形成する」の人生の三つの課題をこなしていく総合的な会話力であるそうな。
さて、本書の構成は
まえがきー会話部への御招待
第1章 会話の構造ー会話力は実は上達が早い
第2章 「会話身体」で人間関係力を磨く
第3章 情報交換とは「贈与」と「返礼」の精神
第4章 マインドフルネスー幸福感を味わう
第5章 活字力と「後輩力」で差をつける
第6章 「大人会話力」でパワーアップ
第7章 言葉遣いのセンスを古典と名作に学ぶ
終章 究極の会話力
あとがきー座の会話力へ
で、本書で言う「会話力」とは
会話には三つの段階があり、それぞれの段階に応じた会話力が求められます。
一番基礎的な会話力は、言葉のやりとりを通じて相手と仲良くなる「雑談力」です。(P30)
私達の会話の大半は雑談なのです。
・・・実は雑談には、その場の人間同士の距離を縮め、場の空気を和らげる力があります(P31)
会話力の第2段階は「意味のやり取り」の会話力です。・・・これは、言い換えれば、相手の話の意味を上手に要約する力です。(P35)
さらにその上をいく最上位の第3段階が「クリエイティブな会話力」です・
これは話しているうちに「ああ、それならこうやってみよう」というアイデアがお互い出てくる会話力です。
クリエイティブな会話力とは、「お互いの間に新しい意味が生まれる」会話です(P36)
という3つであるそうなのだが、この会話力のテクニックは
会話の中で、相手に何を薦める時、違う観点から三つ用意しておくと、相手に「お得感」を持ってもらうことができます(P92)
とか
「他人がジョークを言ったら盛大に笑う」(P159)
相手が何か情報を開示してくれたら、まずは「へ〜」と軽く驚くのが礼儀です(P161)
といった小技の集合体でもあるのだが、ジョークへの対応のあたりは欧米人の得意技でもある。
もっとも
欧米人の会話には、古典からの引用が非常にたくさん出てきます。引用を使うと話の内容が一気に教養に満ち溢れた感じになるのです。
(中略)
では何を引用すればいいのか。欧米では不動のトップ3が確定しています。旧約聖書、新約聖書、シェイクスピアの三点です(P175)
といったあたりは、趣味良い会話には、「教養」が欠かせんな、と我が身を振り返ってちょっと寒くなる。
さて、
人間の意思決定というものは、実は感情に左右されています。(P19)
現代はビジネスが高度で複雑になっていますが、じつはそこで求められる能力の中で、「感じが良い」ということは非常に大きな比重を占めるようになってきています。(P25)
といった時代風景の中で
人の幸福感は、何によって増やすことが出来るのでしょうか。私は「会話」だと確信しています。(P28)
と、「会話」の重要性を一貫して主張するのが本書の大筋。本書で紹介される「小技」をつまみながら、会話の力を磨いてみてはいかがかな。

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