立身出世だけにとらわれない、汎用的な「リーダー論」の基本書の一つ — 河野英太郎「99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ」 (Discover)

前著「99%の人がしていないたった1%のコツ」で仕事の段取り関係のビジネス本で評判をとった著者の今度は「リーダー論」。
「リーダー論」というと、どうしても会社などの組織上の「地位」と密接不可分なところがあって、例えば佐々木常夫氏の「そうか、君は課長になったのか」とかは管理職という側面がセットになっているのだが、本書は、そういう会社内のランクとは別の「リーダー論」として読むべきで、それは「はじめに」の冒頭の
リーダーとはあくまでもチームや組織で仕事をする上の「役割」であり、特別、り‥ダーが偉いわけでも、価値が高いわけでもない
といったところで、立ち位置を示している。
で、構成は
 
CHAPTER1 メンバー選びのコツ
CHAPTER2 仕事の依頼のコツ
CHAPTER3 メンバー評価のコツ
CHAPTER4 トラブル対処のコツ
CHAPTER5 チームを前進させるコツ
CHAPTER6 モチベーションを高めるコツ
CHAPTER7 人を育てるコツ
CHAPTER8 自分を整えるコツ
となっていて、「組織管理」ではなく「チーム管理」という色彩が強い印象で、
実際には、すべての領域で自分が「トップ」であることを優先した結果、チームの目標が達成できないほうが、人心は離れていきます。
いかに自分より優れた人に働きやすい環境を提供するかが、リーダーの仕事であるとすらいえるのです
リーダーや一部のだれかばかりがメンパーを引っ張り、それ以外のメンパーはあとに続く、というチームであってはいけません。
それではチームで仕事をしている意味が半減します。
リーダーの能力以上の成果が出ない組織になってしまうのです
といったところを見ると、いわゆる「立身出世術」とは一線を画するリーダー論であり、「リーダーの職能」論として読むべきであるようだ。
であるから
チーム編成をするときは、「前に出て引っ張る人」「全体を冷静に見渡す人」「専門分野で貢献する人」「それぞれを支える人」など、個々のリーダーシツプの特徴を見極めることが重要です
仕事の制り振りを考えるとき、どうしても一部の人に仕事の配分が集中してしまうことがあります。
私はそれでもやはり、まずはうまくやれそうな人に依頼すべきだと考えています。過去の経験では、できる人というのは私の想定以上のパフォーマンスを出すケースがほとんでした
と「組織をうまく運営する」というよりは「組織体のパフォーマンスを上げる方法」といったところが顔を出すのはやむを得ないが、一方で、会社などのオフィシャルな組織だけでなく、いわゆる「組織」全般でのリーダー論として汎用性は高い。
ただ、もちろん
駆け込んできた人に対して「解決策を考えてからもつてこい!」という対応をしてはならないということです。
なぜなら現場で解決策を考えているうちに、解決できないところまで状況が進んでしまうことがあるからです。
といった組織運営のコツも披瀝されているのでご安心を。
初版が2013年であるので、すでに4年が経過した本ではあるが、基本書は少々以前の本であっても、目を通しておくべきで、この本もその「基本書」の一冊である気がしますね。

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