小猿を従えた美少女くノ一の登場 — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 祝い飯」(時代小説文庫)

シリーズが定着してくると、キャストも固まってきて、話の展開も安心して読めるのは一つのメリットなのだが、マンネリ感が滲み出してくるのはどうしようもなくて、その弊害から逃れるのは、いかに魅力的で気を引く、短期的なキャストを用意するか、であると思う。
今巻は、全巻で季蔵の弟分・豪介を結婚させてしまって、今までのキャストからの新しいネタの提供がちょっと難しくなったところでの、美少女の投入である。
収録は
第一話 祝い飯
第二話 里芋観音
第三話 伊賀粥
第四話 秋寄せ箱
となっていて、結婚した豪介の披露宴と豪介とおしんの子供ができたといったところから始まる。そして、二人の祝言にふさわしい料理を考える季蔵であったが・・・。ってなところで、鯛を使った毒殺事件、といったあたりが、本作でおきまりの突然の舞台転換である。で、ここで投入されるのが、くノ一と思しき、小猿を連れた美少女・お利うで、背中に観音菩薩の刺青を背負っているという念の入った美少女なのでありますな。
まあ、話の本筋は、前作ででてきた、北町奉行の烏谷が幕府の重役と結託してつくった、ご公議公認というか、幕府の財源を生み出すために創った「賭場」の後始末の話。10巻頃までは正義の見方であった北町奉行にも泥がついていたか、となるのはちょっと苦い展開ではある。
今巻で登場する料理は、塩釜で蒸した焼き芋であるとか、潮仕立ての蛤汁であるとか少し小ぶりな物が多いのだが、ここは「お利う」の妙な愛らしさに免じて「可」としよう。
残念ながら、「お利う」は最終章で故郷に帰ってしまうようなのだが、是非に再登場していただけないかと思う次第なのである。

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