美人の女盗賊は処刑後もいろいろ騒ぎをおこすのであった — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 8 黄泉の女」(二見時代小説文庫)

公家武者シリーズの第8巻目は、前巻の女盗賊の話の後日談。
収録は
 
第一話 黄泉の女
第二話 雷鳴
第三話 駆け落ち
第四話 追い出された大名
 
となっていて、後日談は第一話、第二話。
大筋は、処刑されたはずの女盗賊「蛇の権六」が蘇ったのか、そっくりの盗賊が彼女の取り調べと処刑に関わった役人たちへの復讐を始まる。当然、権六の捕縛と彼女の鼻柱を潰した「お初」にもその手は及び、さらには信平も襲われるのだが、その陰で盗賊たちを操るものは・・・、といったもの。
悪党とはいえ、美人には弱いのが本書のお決まりで、権六が盗賊を始めたのには、彼女の家と弟に絡んだ秘密が・・、といったことが根底にあって、そこに、その思惑を利用する悪い武家、といった設定。
 
第三話、第四話は、「蛇の権六」騒ぎの口直しといったところ。
 
第三話の「駆け落ち」は信平が自分の家中に迎え入れたい浪人者とその妻の話。発端は、奥平家に出入りする風間という浪人者が、前話で、権六一派に襲われたお初を助けたことに始まる。その剣の腕と人柄に信平ほかが惚れ込んで家臣にと申し出るのだが、彼とその妻の静江には何か仕官できないワケアリの様子。どうやら、風間が以前滞在していた遠州の藩に関わりがありそうなのだが・・というもの。
 
第四話は、水戸家から嫁さんをもらったがために、その嫁さんと家臣に軽んじれるようになってしまった殿さんの話。いつの世も、なまじ名家から嫁さんをもらってしまうと苦労が絶えないようなのだが、この話は家臣も嫁さん方についてしまうんで、なおさら質が悪い。まあ、最後は、旦那さんの価値が見直されてメデタシメデタシなのだが、嫁さんに加担していた家老は遠ざけるか罰を与えたないとこれからの災いの種を引きずるぞ、と老婆心ながら思うところ。
 
公家武者シリーズも、松姫との暮らしも落ち着いてきて、話の展開も落ち着きをみせて円熟してきた。後口良く、さっくりと読める時代物として貴重でありますな。

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