さて、涼子サマの「怪奇事件簿シリーズ」のレビューも4作目となった。今回は、豪華客船「クレオパトラ八世号」で香港までのトラベル。もちろん、仕事がらみであって、任務は「ラ・パルマ共和国」という南米の国の前大統領・ホセ・モリタの護衛である。この人物、日本国籍を保有しながら南米の国の大統領となるという輩であるから、こうした話のお決まりの設定で、日本からの援助金の着服や国内の民主派や反政府ゲリラの弾圧・殺害といった悪行もなんのその、といったところである。
事件は、出港したての船内のアトラクションで、若い手品師がバラバラでされる殺人が起きるところから始まる。すわ、テロリストか、と普通のミステリーではなるのだが、そこは「怪奇事件簿」であるから、「人」ではない。ネタを少しあかせば、南米の怪物「生きた水銀」の登場となるのだが、その形状と退治方法は本書で確認あれ。
さて、物語は、このホセ・モリタの手先らしいところとの戦闘やら、怪物が涼子サマ一行を襲ってくるので、それとの死闘やらと、あいかわらずの展開の早いアクションの連続であるので、このあたりは作者の手の内に乗って、ほいほいと楽しめばよい。
「おっ、そうであったか」と嬉しくなるのは、ホセ・モリタの隠された野望とそれを無慈悲に打ち砕く、涼子サマのあいかわらずの腕の冴えである。このへんは物語の最後の方で明らかになるので、最後まで読むべし。
さて、豪華客船というと周りはすべて「海」という状況であるから、古来より、優等寝台列車と並んで、密室ミステリーの格好の舞台である。ただ、難点は、乗船者数が列車と違って桁違いに多いことで、どうかすると事件に気づいた乗船客のパニックやら大量殺人や大量人質などがでた、収拾がつかなくなるのだが、そこは反則スレスレの解決策が用意されている。
なにはともあれ、今回は、なかなかの素材の片鱗はありつつも、活躍の場がなかった、貝塚巡査(香港名:呂芳春(自称))が活躍するほか、いつものメイドたち、リュシエンヌとマリアンヌも大活躍ということで、美少女ファンも大歓喜の展開であります。
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