お涼サマ、シベリアでも大乱闘 — 田中芳樹・垣野内成美「薬師寺涼子の怪奇事件簿 魔境の女王陛下」(アフタヌーンKC)

今巻のお涼サマの活躍の舞台はロシア・極東。
金融工学を駆使したファンドの運営者で、しかも猟奇殺人者の捜査行である。
原作の発刊が2012年なので、2008年のリーマンショック以後の金融工学の弊害があれこれ言われていたあたり。もっとも、この話の標的の悪党がそうしたファンドの主であったといった設定であって、本筋の「怪奇」のところとは関係ない。
本筋のところは、ロシア・ハバロフスク地方の廃都市を舞台に、本巻の悪党・日下とその一派の逮捕劇と彼らが飼育・繁殖させている古代の猛獣との大乱闘といったところなのであるが、どうも、このロシア・極東というところは、だだっ広くて茫漠としていて、ロシアギャングについてのバックグラウンドの知識が曖昧なので、「怪奇」のイメージングがし辛いのがちょっと残念なところ。
まあ、物語のほうは涼子サマグループは、泉田警部補、貝塚巡査、安倍巡査も含めほぼフルキャスト。室町・岸本のライバルグループは、いつものように日本の高官の随行で登場という、定番のところで、猛獣や標的の悪党も残虐で、と安心してお涼サマの美しさを楽しめる出来具合であります。
腕利きのメイド「リュシエンヌ・マリアンヌ」コンビの素性が明らかにされそうなシーンもあるのだが、詳しい所は別の所でといった辺が残念ではありますな。

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