「白犬」に導かれて、「善光寺」ならぬ「殺人」巡り — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 23 花見弁当」(時代小説文庫)

気のあった料理人仲間であった武藤が行方をくらまし、心にすきま風が吹いている季蔵であったが、一人花見に出かけた先で、本巻の新たなキャストに出会うことになる。それは、なんと「白犬」である。
 
構成は
 
第一話 花見弁当
第二話 江戸っ子肴
第三話    若葉膳
第四話 供養タルタ
 
となっているが、今回も一話完結ではなく、一巻完結の話。
 
まずは、季蔵が霊岸島へ花見に出かけるところからスタート。花見の料理は、さすがというべきか、「鶏肉の柚酒焼き」「豚肉の柚酒煮  という豪華版なのだが、そこで出会った白犬にほとんど全てを食べられてしまう。しかもこの犬、料理の気に入り具合を吠える回数で表現するという生意気ぶりである。
 
第一話の本筋の事件は、呉服問屋の手代・長助が酒に酔って変死するものなのだが、この花見の時に登場する、塩梅屋の近くの煮売屋親子が、この巻での重要な配役となるので覚えておこう。ちなみに、この煮売屋の娘が、死んだ長助に惚れていたのだが、この長助、あちこちの娘から菓子やら甘酒やら煮売やらの食べ物を貢がせていたという、野暮なんだがどうだがわからない色男である。
 
第二話は、事件のほうは、上方からの下り酒を見せ金に、水で薄めた酒を高価な値で売り払うという騙し蔵の詐欺に関連する殺人事件なのだが、メインは、蔵之進の配下を務める、ベテランで腕利きの亀吉親分の引退お引き止めようと、江戸っ子の粋を集めた宴席を設ける話。提供される料理は、   「江戸っ子膳」と銘打って「意図ミス場の刺身風、納豆の卵巻き、蒟蒻と胡桃の酒粕和え」「鰹の江戸風味」「豚肉の柚子煮」「烏賊の共焼き」「エビの天麩羅江戸っ子風」「白独活とワカメの酢の物」「鮪のきじ焼き風茶漬け」で、なんとも粋なもの。
この時点で煮売屋の娘は  という店に奉公していて、しかも、その店の若旦那に見初められて、というなんだか嘘っぽい話。こういう、惚れっぽいが、純粋な良い娘にこの作者は手厳しいので、注意が必要であるな。
 
第三話は、その宴席の話がメインで、煮売屋の娘・桃代の奉公先・みやび屋の若旦那・慎吉が誠実そうな雰囲気を醸し出すが、さて本質はどうか気になる所。この話の最後で、前話で復帰することを誓った亀吉親分が卒中死する。彼が宴席の最後に喋る「友人を石見銀山で毒殺した子供」のエピソードがどこで関係してくるのか、そして、騙し蔵の殺人に関わりのありそうな京風の着物を来た美人の年増女の正体も、ここではまだ謎のまま。
 
第四話は、その桃代の嫁取りにみやび屋親子がやってくる時の料理に「茶」をつかったものを季蔵が考案しているうちに、みやび屋の主人が心臓病の発作で突然死、さらには、お内儀のはな江が毒殺。犯人の疑いのかかる桃代は近くの稲荷神社で自殺、とやたらと人死にが出る。この一連の事件の鍵となるのは、騙し蔵の事件で出てきた「年増女」なのだが、性の趣味の違いと身近なところに犯人がいる意外さに驚くが、真相は原作でご確認を。
 
さて、見目の良い男には、とんでもない裏がある、というのが印象的な本巻。そういう類の男に騙される娘たちが、哀しいですな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です