男を手玉に取る悪女のあっけない最後は、どことなく哀れ — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 瑠璃の水菓子」(時代小説文庫)

このシリーズは、毎巻、その巻を彩る、いわばゲスト的なキャラクターが登場してくる。近くでは、出張料理人を偽っていた隠れ者の旗本とか、武家上がりのおきゃんな芸娘とかが登場していたのだが、今巻は、河童屋の平助というまっすぐな胡瓜を売る野菜売りと男をコロリと手玉に取る「お連」という長唄の師匠という対象的な二人である。
 
収録は
 
第一話 河童きゅうり
第二話 江戸香魚
第三話 瑠璃の水菓子
第四話 鮎姫めし
 
となっていて、まず第一話で、ごろつきが二人がそれぞれ別の日に、胡瓜を手にして殺されていたもの。胡瓜が特別製なのと背中にくらげのような河童のような絵が描かれていたもの。この胡瓜と河童の絵のせいで、平助が下手人の疑いをかけられるところからこの巻はスタート。
 
もちろん、お連の方も大活躍で、米沢屋という米問屋の主人・征左衛門と若旦那・そで吉をそろって手玉に取るという荒業を展開する。二人を手玉にとるのは、米沢屋の身代が目的なのか、ほかに理由があるのか、この辺は最終話でやっと明らかになるのだが、はじめのところは色悪の女そのものですな。
 
そして、第二話で、米沢屋の若旦那・すえ吉が殺されたり、第三話で、米沢屋を揺すっていた彦一という願人坊主が墓荒らしをしている最中に殺されていたり、さらには「お連」も突然自殺したり、と悪辣なのが次々死んでいく。
この連続殺人の種明かしは、というところで、平助の友人で彼に胡瓜の苗を卸している弘吉という存在が急にクローズアップ。しかも、彼の武家時代の過去がキーというのはちょっと後出しジャンケンでは、と思わないではない。もっとも「お連」殺しの犯人は不明なままで、解明は次巻以降へ引っ張られる。
 
さて、このシリーズの特徴は、毎回、凝った料理が披瀝されるところで、今巻でも鮎づくしとか鮎のかど飯とか鮎を使った料理が数々でるのだが、当方的に、鮎勢をなぎ倒して躍り出るのは、表題にもある「瑠璃の水菓子」で
 
熟れて濃い香りの漂う真桑瓜の皮を剥き、種を除いて、みじんに切った後、すり鉢でどろりとづるまで擂り潰した。
寒天は水でふやかしておく。
鍋に水と千切った寒天を入れて煮溶かし、三度ほど漉してから砂糖を加えて混ぜる。
これが人肌程度に冷めたところで、どろしとした真桑瓜と混ぜ合わせて、長四角の流し缶に注ぐ。
後は盥を手にして、井戸端と厨の往復である。・・・これに限っては固まるまで続けなければならない。
やっと出来上がった真桑瓜の水菓子は、流し缶から取り出して、切り分けてみると、鶸萌黄色の寒天と真桑瓜の果肉部分が二層になっていた
 
というもので、真桑瓜ゼリーが正体。今では、メロンに競べて格下の薪割売なのだが、ちょっとこいつは惹かれますな。とはいうものの、鮎料理も一工夫も二工夫もあって、粋で旨そうなものばかり。江戸を揺るがす「大悪」ってのも今回は登場しないので、料理の方を堪能してみてもよいですね。
 

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