「勤勉さ」だけが正当性を持っているわけではない — 本田直之「なまけもののあなたがうまくいく57の法則」(だいわ文庫)

レバリッジもので一世を風靡した本田直之氏による、「なまけもの」への「提案書」で、筆者によれば、なまけものは「堕落型のなまけもの」「幸福型のなまけもの」「前進型のなまけもの」の三種あって、本書はそのうちの「前進型のなまけもの」を目指そうと提案している。
構成は
1 発想をかえてみる
2 毎日の生活を変えてみる
3 仕事のやり方を変えてみる
となっていて、第1次世界大戦後、ドイツ陸軍を再建したドイツ軍人ハンス・ゼークトによれば有能ななまけものは、自分が怠けるため部下の力を最大限に活用し、いかにたやすく成果を挙げるかを工夫するため、「プロジェクトリーダー」の素質があるらしいし、無能ななまけものは「自ら考えようとしないため、参謀のいうことをそのまま実行するため、「経営者やエリアマネージャー」の素質があるということで、「なまけもの」も意外と使いみちがあるようだ。
もっとも、日本では、「勤勉」であることが一般的に推奨されているので、「なまけもの」であることは褒め言葉ではない。著者が、あえて「なまけもの」という言葉を持ち出したのは、「有能な働き者」さが時にして弊害を生み出してしまうことのある現代を諷してのことであろう。なので、「なまけもの」へのアドバイスも
出発点が「自分はなまけものなんだ」という人は違います。
彼らは、自分が正攻法で臨んでも簡単にギブアップしてしまうことがわかっているので、なんらかの工夫を考えます。
そして工夫によって結果が出ると、大きな達成感や喜びを得ることができます。
と「なまけもの」の自覚を持つ大事さから始まって、
実際にわたしの周りにいる「有能ななまけもの」たちは、ほぼ例外なく優先順位など考えず、思いついた順に仕事をこなしています。
実際、それでうまくいっているから面白いものです。
なまけものにとって大切なのは、とにかく「仕事をためない」ことです。
であったり
自分の持ち時間を把握していない」というなまけもの共通の欠点です。
週末なら週末、自分にどれくらいの持ち時間が与えられているのか、うまく把握していない。
(中略)
そこで賢いいなまけものたちは「時間配分表」をつくります。
毎日使っている時間割・スケジュール帳とは別に、旅行先や週末などの「限られた時間」をいかに過ごすべきかを目に見える形にしていくのです。
わたしが実際にお会いして「この人は時間の使い方がうまい」と思う人は、ほぼ例外なくこの時間配分表をつくっています。
といったように、「勤勉」でないことを自覚することにより、「勤勉さ」を上回るパフォーマンスの可能性を教えてくれるのである。
そして、
何事も「続けること」に力を注いではいけません。
そんな動機付けで続けられるのは勤勉な努力家だけで、われわれなまけものには到底無理なのです。
われわれなまけものが力を注ぐべきは「習慣にすること」です。
といったように、勤勉さに拘るあまりの「三日坊主」を向こうに押しやるアイデアも教えてくれるのである。
まあ、「真面目さ」とか「謹厳さ」を考えるあまり、思考形態も行動も「硬直化」そいてしまうのが一番最悪なこと。「なまけもの」であることを自覚して、より柔軟な人生を歩んでみるのがよいかもしれんですね。

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