新しいマーケティング手法「ファンベース」の解説本第二弾 — 佐藤尚之「ファンベース」(ちくま新書)

「明日のプランニング」では、ファンベースとマスベースという2つのマーケティングについて論じられていたのだが、その「ファンベース」についてさらに深化させたのが本書。
 
構成は
 
はじめに
 ーファンベースは、あなたが思っているより、たぶん、ずっと重要だ
第1章 キャンペーンや単発施策を、一過性で終わらせないために
第2章 ファンベースが必要な理由
第3章 ファンの支持を津得する3つのアプローチ
 〜共感・愛着・信頼
第4章 ファンの支持をより強くする3つのアップグレード
 〜熱狂、無二、応援
第5章 ファンベースを中心とした「全体構想」の3つのパターン
第6章 ファンベースを楽しむ(もしくは実行の際のポイントの整理)
 
となっていて、ファンベースからのマーケティングのおさらいから始まって、ファンベース・マーケティングの留意点、実施方法の肝について述べられている。
 
「明日のプランニング」のおさらい的にいうと、
 
ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方(P7)
 
ということで、人口急減、超高齢化、少子化、独身増加という現代の市場環境の中で、今までの短期キャンペーンを中心とした手法が効果を喪っているというのが本書の主張なのだが、結構ページを費やして、ファンベース・マーケティングの必要瀬が説かれているのは、未だに、新規顧客中心のマーケテイング展開が中心であるのが原因でもあろう。ただ、多くの新規顧客キャンペーンが「新しい」顧客ではなく、既存企業とのパイの奪い合いをするだけの状況に陥っていることを考えると、筆者のいう「ファン」をつくる、一緒に成長するという手法の重要性は自明でもある。
 
 
具体のファンベース・マーケティングの展開には
 
「新規顧客ではなくファンを優先すること」を意識的に習慣化する必要がある
 
商品を愛してくてる20%のファンを「囲い込み」する必要はないし、発信力あるファンほど「囲い込み」を嫌う(P121)
 
といったことに留意しながら、
 
お客様というより、大切にする価値を共有し喜び合う「仲間」であり、もっと言えば「身内」ともいえる存在(P169)
 
であるコアファンをつくっていくという活動であるから、従来のカネとマンパワーで押し切れ、といった体育会系のノリとはかなり違う。それは
 
「ファンの数を増やし資産化する」のではないことに注意してほしい。資産化するというと「ファン・コミュニティの参加人数を増やす」みたいな「数」の発想になる人がいるが、ファンとは「揮毫やブランド、商品が大切にしえいる価値を支持している人だ」。短期施策や単発施策で気づいてもらった「価値」に対する「好意」を積み重ねていく事が必要だ(P32)
 
 
ファンベース施策のとき、一番間違えがちなのは、「全員にファンになってもらいたい」と望んでしまうこと(P89)
 
といった「量が一番」という考えとの決別でもあるので、今までのマーケティングについての経験や思い込みをすっぱりと洗い落とさないと行けない所も多い。人によっては、特にベテランと称される人の中には、結構な意識変革が必要となるだろうな、と妙な心配をしても見るのである。
 
なんにせよファンベース施策を実行する際のポイントは
 
①スモールスタートで楽しむ
②時間をかけることを楽しむ
③ファンになってもらう過程を楽しむ
④常連さんをお迎えすることを楽しむ
⑤ファンという少数と楽しむ
⑥コミュニティ運営を楽しむ
⑦キレイゴトを楽しむ
 
であるらしい。ねじり鉢巻で販促に汗水たらす、といった世界とはちょっとかけ離れてきているようでありますね。
 

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