「弱点」は克服するものではない — 中村 元「常識はずれの増客術」(講談社+α新書)

水族館プロデユースで有名な中村 元氏の、今までの水族館ビジネスの経験からの「集客術」「増客術」。
 
構成は
 
序章 集客力を上げるにはコツがいる
 
第1章 大人向けにリニューアルして大成功!常識を覆した「サンシャイン水族館」
 
第2章 「闘うワークショップ」で、スタッフのちからを150%引き出す
 
第3章 田舎の弱点を強みにして集客数を15倍に上げた「北の大地の水族館」
 
第4章 「業界初」の仕掛け。宣伝力で知名度をアップさせた「鳥羽水族館」
 
となっていて、提案される内容やアドバイスも、経験に裏打ちされた、理屈っぽものではないので、すんなりと読めるビジネス書になっている。
 
で、筆者の業績でやはり凄いのは、けして条件の良くない水族館を舞台に、増客を果たしていること。それは、都会地のビルの中の水族館で敷地や水量の限られる「サンシャイン水族館」であったり、ど田舎の、交通の不便で、しかも予算が限られるので小規模で飼育種類の限られる「北の大地の水族館」であったり、かなりのハンデをものともせず増客をしているところなのだが、その対策は
 
弱点は大変な努力をして克服するよりも、もっと楽な方法でカバーできる。
必ず裏道や違う方法がある(P135)
 
弱点は克服するのではなく、武器にする。極めつきの弱点であればあるほど、それは誰にも負けないすごい武器に変えることができる(P138)
 
といったことが思想的原点であるところが、さらに凄いところではある。
 
水族館や動物園、博物館といった「装置型」の展示施設は、金にものをいわせて豪華な展示物を集めたほうが圧倒的に集客面では有利であることは間違いないのだが、地方のまちづくり、活性化の面で考えると、そんな潤沢な資金は期待できるはずもなく、氏の
 
お金がないという弱点から考えを巡らせていくことで、いくつもの弱点がすべて強力な武器へと変化していく。
弱点は進化と創造を生み出す泉(P130)
 
といった主張は、とても心強い。そして、その原動力は
 
組織を壊さないと、真の意味で新しいものをつくることはできない(P54)
 
人をあっと驚かせて惹きつけるようなものをつくるには、終着駅をつくってはならないのです。アイデアを余分に出して、それらが競争し合うことで、それぞれがさらに進化します(P57)
 
といったところにあるようで、才能や天性といったところではなく、泥臭くはあるが、「たゆまぬ努力」の大事さを教えてくれるのが、好ましい。
 
「あとがき」によれば

アシカの社会では、時代や環境によって生き残るタイプが違う。つまり、それぞれのタイプの能力を存分に発揮した者にだけ、生き残るチャンスがあると言っていい(P206)
 
であるらしい。それぞれが、それぞれの持ち味で、それぞれの舞台で頑張り。勝負していくことが大事、ということでありましょうか。
 

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