「コーチング」というものの「初歩の初歩」を学ぶ — 本間正人・松瀬理保「コーチング入門(第2版)」(日経文庫)

「コーチ」というと当方のような中高年世代は、テニスやバレーをテーマにした少女スポーツマンガの世界で登場するぐらいしか心当たりがないものだったのだが、本来は、そうした分野に限定して考えるものではないらしい。
 
構成は
 
第1章 コーチングとは
第2章 コーチングの基本的な考え方
第3章 傾聴のスキル
第4章 質問のスキル
第5章 承認のスキル
第6章 コーチングのアプローチー「GROW」モデル
第7章 ケーススタディ
 
となっていて、
 
プロフェッショナル・コーチとは「クライアントが日常生活やビジネスにおいて成果を得るように手助けするためのオンゴーイングのパートナー」であり、コーチングの過程において、「クライアントの「学習・パフォーマンスを上げ、生活の質を高める」役割を果たす人(P36)
 
といったところから考えると、「コーチング」と横文字を使うより、「指南」とかそういう日本語固有の表現のほうがしっくりとはくる。
 
もっとも、「コーチング」というと「教えること」と同義にとらえてしまうことが多いのだが、本書によると
 
ティーチングが「すべての人に対して、同じ方法を同じ方法で伝える画一的なアプローチ」であるのに対し、コーチオングは「個々の相手に対して、指導すべき内容と方法を変える個別のアプローチ」(P38)
 
ということであるらしく、上から一方的に講義する、伝達するといった旧来のものとは「コーチング」というものは、別物であるようで、それなりに「技術」を学ばねばならないものであるらしい。
 
しかも、
 
あらゆる業務上の判断を、部下に委ねず、・・・一方的な指示明英に終始する上司を時々みかけます。このようなマネジメント・スタイルを「コマンディング」と言います。このように機敏な対応は、火事場や緊急の場面では有効です。しかし、長期的に、部下を育成する観点からすると、こればかりでは困りものです。
(略)
現代の組織の中で必要とされるのは、自分で考え、自分で目標を立て、自分で工夫していくような自立型(自律型)の人材です。そうした主体性を引き出すためには「任せる」(delegation)発想(デレゲーション)が不可欠なのです(P46)
 
ということであるから、昔ながらの職場教育、ジョブトレに染まった世代は、相当に意識を変えないといかない部分も多いようだ。
 
「世代間のの継承」とか「技術・ノウハウの伝承」といった機能が衰えてきている状況下において、部下とか後輩を導く、あるいは技術を伝えながら、彼ら一定のレベルまでの上昇も誘導する、といったことは、当方も含めた「戦後世代」「バブル世代」の義務に近くなっている気がしていて、その意味で、「コーチング」のスキルを身につけることは、今後ますます重要となるに違いない。
 
本書は、「入門書」の中のさらに「入門」といっらレベルの本なので、具体の手法やスキルを身につけるには、さらに深めたものを読まねばならないだろうが、ほんのさわりの感覚をつかむには良いと思いますな。
 

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