「修行」「苦行」の読書はやめにしませんか — 印南敦史「読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術」(星海社新書)

LifeHacker Japanで多くの書評を発表している著者の手による「読書術」なのであるが、前作の「遅読家のための読書術ー情報洪水でも疲れない「フロー・リーディングの手法」でも、読書スピードが遅いことを明らかにした上での読書術を展開されていたように、本書も一味違った「読書術」となっている。
 
構成は
 
はじめに なぜ、「読んでも忘れてしまう」のか?
第1章 「忘れる」ことから読書は始まる
第2章 肩の力を抜いて読書するための心構え
第3章 それでも「忘れない」ための具体的な方法
第4章 楽しい読書を取り戻そう
 
となっていて、今回のテーマは「読んでも、内容が記憶に残らないこと」の対処法。「読書術」といえば、「早く読むこと」と「読んだら忘れないこと」についての方法論がお決まりになっている感があって、本書のように「忘れてしまうことを認める」ことからスタートするのは、かなり珍しい部類ではある。
ただ、よくある「読書術」の本の「速読」と「内容の記憶」のノウハウに浸っていると自らの能力不足を責められている気がしてきて、息苦しくなるのは間違いなくて、
 
重要なのは、覚える「量」ではなく「質」だからです。いいかえれば、自分にとって必要のないこよを機械的にたくさん記憶するよりも、「必要なこと」を積み上げていくことのほうが大切(P27)
 
といった風の、その呪縛から開放してくれるのはとても有り難い。
 
とはいっても、そうした「記憶」に留める技術の紹介が全く無いわけでなく、
 
「覚えられる読書」は「アクション」ありきなのです。汚すか汚さないかは、その一形態にすぎないのです。・・日常の自分自身の意識的な動きを読書と連動させることができれば、それは無理なく覚えられることにつながっていくのです(P122)
 
という観点からの
 
・室内でも屋外でも、集中しやすい場所で読書に集中する
・(可能な範囲で)周囲の状況にも関心をもつ
・印象的な場面、出来事、人などを、意識の裏側に貼り付けておく
・本の印象的な部分、感動的な部分、記憶した部分などに出会った場合は、特に「周囲でおこった何か」「いた場所」「通過した駅」「情景」などを覚えておく(P126)
 
といった「シチュエーション記憶法」であったり、速読法としての
 
目次よりも先に登場する序文は、著者の思いが凝縮されたその本の心臓部です。
(略)
この部分をじっくり読めば、本文にどんなことが書かれているのか、おおよそ見当をつけることができるのです。
(略)
まずは序文で概要をつかみ、その後は目次から必要な部分だけをチョイス。あとはそこを読んでいけば、求めている情報を得ることはできるわけです。・・ちなみに不明瞭な点があったら、そのパートの少し前の数ページを確認してみれば、おおよその流れはつかむことかできます(P163)
 
といったこともきちんと抑えてあるので、そこはご安心を。
 
ただ、本書の要点は
 
もしも、いまの読書に居心地の悪さを感じているのだとしたら、それはムダな決まりに縛られているからかもしれません。
でも、その読書は自分自身のためにあるのです。だからこそ、”自分なりの”価値をその本の中に見つけることができるのです。そしてその価値を見つけることができれば、覚えたいことは嫌でも覚えることができるはずです。(P185)
 
といったあたりと、当方的には思っていて、要は、自分にあった読書法を、あれやこれやのお節介な「読書術」本に惑わされずに探してくださいな、というところであろうと勝手に解釈した。
「読書は楽しくする」ものであるのが、第一でありますよね。
 

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