「速く」そして「全てを同時に」がソフバン流PDCAの本質か? — 三木雄信「孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA」(ダイヤモンド社)

成功した経営者の経営手法や事業手法を範にとったビジネス本は、その「哲学」部分については、事業の浮沈や時代の変化に伴う毀誉褒貶の変化などがあるので、とりあげるのを躊躇するところもあるのだが、PDCAといった、いわゆる経営技術に関わるものについては、「成功したこと」がすなわち内容証明になっている部分もある。そうした意味で、経済界の風雲児である、孫社長ひきいるソフトバンク流の「PDCA」について書かれた本書は一読に値すると言っていい。
 
構成は
 
はじめに 超スピードで、残業なしで結果を出す方法
序章 なぜ高速PDCAなら超スピードで仕事が片付くのか?
第1章 高速PDCAを動かす8ステップ
第2章 月間、週間ではなく「毎日」の目標を設定する
 ー高速PDCAの「P」
第3章 一つひとつではなく「同時にすべての手段」を試す
 ー高速PDCAの「D」
第4章 結果は「数字」で厳密に検証する
 ー高速PDCAの「C」
第5章 「いちばんいい方法」だけを磨き上げる
 ー高速PDCAの「A」
第6章 「人の力」を借りて、もっと速くなる
おわりに ソフトバンクの成長が止まらない理由
 
となっていて、一言で言うと、
 
一度でも失敗すれば、評価に☓がついてしまう。この仕組みが変わらない限り、日本企業で働く人たちがチャレンジを尻込みする状況が続いてしまうかもしれません。
でも、リスクの許容度が低い組織の中で、より高い結果を出し続けていく方法が一つだけあります。
それが「高速PDCA」なのです。
 
ということで、『「誰もがすごいと思う仕事」は、やり方次第でだれでもできる(P6)』ということなので心強い限り。
 
で、本書によると、普通の人が仕事を滞らせている6つの原因(P11)は
 
①計画に完璧さを求めること
②一球入魂主義
 クリアするための方法を一つずつ試していて、時間がかかっている
③期限の甘さ
④数値で設定されていない曖昧なゴール
⑤検証の中途半端さ
⑥自前主義
 
ということのようで、この原因を除去するための方策が「高速PDCA」ということであるらしく、その肝は
 
①思いついた計画は、可能な限りすべて同時に実行する
②一日ごとの目標を定め、結果を毎日チェックして改善する
③目標も結果も、数字で管理する
 
で、高速PDCAを実践するステップ(P83)は
 
Plan(計画)
①大きな目標を立てる(週・月単位など)
②小さな目標を立てる(1日が原則)
③目標達成に有効な方法をリストアップする
Do(実行)
④期間を決めて、すべての方法を同時に試していく
Check(検証)
⑤毎日、目標と結果の違いを検証する
Action(改善)
⑥検証をもとに。毎日改善する
⑦一番すぐれた方法を明らかにする
⑧一番優れた方法を磨き上げる
 
ということであるのだが、「すべての方法を同時に試す」メリットや方法など、PDCAを回す具体的な手法は本書の中で確認あれ。
で、当方的に、この「高速PDCA」の最初のステップで大事なのは、「完璧を期して遅くならない)ということにあると感じていて、そのあたりは、先だってレビューした「儲ける社長のPDCAの回し方」でも言われていた、『「今までと違うこと」や新規事業を始める時は「P」よりも「D」を起点にしたほうがいい。』に共通するものがあるようだ。
そして、
 
PDCAを回すスサイクルが月間や週間では、あまりにも遅すぎる、というのが私の所感です。
(略)
自分の失敗にできるだけ早く気づき、大きな痛手にならないうちに、こまめに改善を繰り返す。それが高速PDCAの重要なポイントです。
そのためにも、毎日の結果を確かめる必要があります。
 
といったところに、「PDCAサイクルは使えない」といわれる、速度の遅さをカバーするコツがあって、そのときに重要なのも
 
最初の目標は「仮置き」でいい。
実行してみて、この中間目標では最終ゴールを達成できないなら、毎日の数値目標も改善していけばいい(P110)
 
といった風に、完璧を期して検討しすぎない、走りながら考える、といった態度であるように思える。もっとも、その前提となる『「失敗を前提に行動する」ことをルール化する(P53)』や『人より早く、たくさん失敗することで、素早く軌道修正できる。だから結果的に、誰よりも速くゴールを達成できるのです。(P112)』といった感じに企業風土を変えれるかどうか、はちょっと不安なところはありますな。
 
さて、この「高速PDCA」、企業全体の業績を飛躍的に向上させるという目的だけなく、
 
孫社長が実践する「ナンバーワン戦略」は、企業の経営だけに当てはまることではありません。
個人が仕事の目標を立てる際も、ぜひナンバーワンを指標にすべきです。
(略)
その人たちの業績を超える数値をゴールに設定し、「やる!」と決めるところから、あなたの「高速PDCA」が回り味めます(P237)
 
ということで、一人ひとりが自分の業績アップや働き方の改革、あるいは副業などの新分野への進出などにも応用できるとのこと。「実践」には結構、頑張らないといけないところもあるのだが、行き止り感や閉塞感に悩んでいて、自分のレベルと飛躍的にあげたい、と思っているビジネスマンは挑戦してみてはいかがであろうか。
 
 
(追記)
孫正義のPDCAはマンガ本もでているようですね。 
 

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