「働く」を阻害する「職場」に仕掛けられた罠の数々 — 沢渡あまね「職場の問題地図」 (技術評論社)

「働き方改革」や「時間外縮減」という声が突然喧しくなったのだが、「だから、云々」と、時間外勤務や職場環境の悪さを、「自分とは関係ないですよオーラ」を出した上に、「ここを効率的にしたら・・」ってな発言をしてくる輩にイラっときたことはないだろうか。そんな奴らに対して、「原因はあんたかもよ」と、代わって言ってくれているのが本書。
構成は
はじめに
 なぜ日本の職場の生産性はいつまでたっても低いままなのか
1丁目 手戻りが多い
2丁目 上司・部下の意識がズレてる
3丁目 報連相できていない
4丁目 無駄な会議が多い
5丁目 仕事の所要時間を見積もれない
6丁目 属人化
7丁目 過剰サービス
8丁目 「何を」「どこまでやればいいのか」が曖昧
9丁目 仕事をしない人がいる
10丁目 だれが何をやっているのかわからない
となっているのだが、勤め人ならおわかりのように、組織上のトラブルが起きた時、「こいつらなんですよ、犯人達は」というものがしっかりフォローされている。
それはたとえば
このようにして、無駄な会議や突発的な打ち合わせがどんどん増えます。
そして、対面至上主義が形成されていきます。また、対面至上主義の職場では、自由な働き方が阻害されます。フリーアドレスなんて、もってのほか。
部下が近くに座ってくれていないと、上司は不安ですからね。テレワーク(在宅勤務)なんて、とんでもない― 離れているところにいる部下を信頼できるわけないじやないですか。こうして、いつまでたっても働き方が旧態以前としたまま。
とか
どうやら、日本企業に勤める人たち(私もその1人でしたが)は、「脱属人化」や「マニュアル化」を避けたがるようです。
古い企業のベテラン社員ほど、その傾向が強いといえるでしょう。
そして、時にベテラン社員は自分の仕事を剥がされ、 マニュアル化されることに激しく抵抗します
といったところなのだが、「手戻りの発生」「組織内の情報共有の欠如」「一人しか中身を知らない仕事の発生」などなど「ああ、よくあるね」と思った端から、「働き方改革」ってのは、だから進まないんだろうな〜、と思わず嘆息してしまう。
まあ、もちろんこういう類の本なので、たとえば「手戻り」の防止策では
テレバシーなんて身につけなくても大丈夫―ポイントは、仕事に着手する時の成果物のイメージ合わせと報連相の設計です。
ここでは、次の2つを押さえましよう。
①ポンチ絵を描く
②報連相のタイミングを設計・合意する
とか、コミュニケーションの「場」づくりの方策として
・率先して雑談する。
・お互いの取り組みやノウハウを学ぶ場を設ける(事例発表会、勉強会など)
・バックグラウンドを知る機会を設ける(キャリアのたな卸し勉強会など)。
・オフィスの端っこに「井戸端」を作ってみる(コーヒーサーバーを置くなど)。
・オフタイムのコミュニケーションの場を作る(飲み会でなくても、ランチタイムでもOK)
とかの提案があったりもするのだが、基本のところは
研修は、所詮個人のスキル強化にすぎません。それも大事ですが、個人のスキルアップだけでは、仕事のやり方は良くならない。むしろ、日々の報連相のやり方や会議の進め方などのプロセスを見直すほうが大事です
というように、組織全体が問題意識を共有し、組織全体で取り組むことの必要性であろう。ただ、「組織全体で・・」となると、では「プロジェクト会議を招集して・・」「皆が集まって・・」という対応にでがちなのだが、それはかえって、「出社主義」の強調や、「終わらない会議」の増加を生むだけともなるのでご注意を。
さて、こうした「職場のトラブル」、解決するもしないも、職場ではたらく、「私」や「あなた」次第。そして、トラブルの原因ともされている「上司」「ベテラン」次第でもある。本文中でも引用されている「「定義できないものは、管理できない。管理できないものは、測定できない。測定できないものは、改善できない」という、W・エドワーズ・デミング博士の言葉を胸に「職場の改革」、やってみましょうよ。

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