「稼ぐ」体質になるには、日々の地道な行動が大事 — 午堂登紀雄『「お金をもらう」から「稼ぐ」人になる習慣術』(パンダ・パブリッシング)

最近、「働き方」を中心にしたレビューが多かったのだが、働く環境の整備も大事だけれど、「お金が儲かる」ようにならないと「働き方」だけよくしてもねー、という向きも多いかと思う。
そうした向きに、「根底にあるのは、「僕たちにとって無駄な経験は何もない。どんなことでも必ず何か学びがある」 という視点」に立って「考え、発想する」というビジネス心肺能力を鍛える方法、「試行錯誤を続ける」というビジネス足腰を鍛えるための方法や考え方という「稼ぐ」ためのノウハウについて論じたのが本書。

構成は

第1章 24時間まるごろ学校化作戦
第2章 知的生活につながる時間術
第3章 マルチプル時代を生き抜く知的生産術
第4章 どこでもオフィス化計画
第5章 情報をお金に換える作戦
第6章 知的生活を生む発想法

となっているのだが、「稼ぐ」ための具体的なヒントやTipsというよりは、本書は、「稼ぐ」思考形態になること、「稼ぐ」身体機能を身につけること、の紹介を主眼としていて、たとえば

タクシーに乗るとき、ホテルに泊まるとき、銀行に行くとき、美容院に行くとき、それぞれに視点を持っておくと、たくさんの気づきが得られます。そして、そういうことをメモしておく、ブログに書いておく、など何らかの手段で記録しておくと、それがいずれ話のネタになるのです。

サービスを受けてお金を払うときは、 次からは自分で同じことがやれるくらい、彼らが提供するものをじっと観察し、盗むようにしましょう。

講演やセミナーに出たら、内容だけでなく、講師の話し方、資料の作り方、運営の仕方、会場の環境などをじっと観察します。そして、次からは自分でセミナーができるくらい、注意を払って吸収します。

といった風に、「取り組み方」、「心の持ち方」のアドバイスの傾向が強い。それは、

世の中は、「マルチ」化、「マルチプル」化が進んでいる印象を受けます。企業経営でも単一の商品・サービスはいつか飽きられるため、周辺分野に手を広げていく必要に迫られています。

収入源も、「給与収入」ひとつだけでは心もとないため、複数の収入源をつくることによって、人生の余裕と選択肢が広がります。

といったような、今の企業社会が不安定化していることへの対応でもあるのだろうし、さらには、その不安定さ故に、具体の方法論をあれこれ考えても、すぐに陳腐化することへの対応でもある。このあたりは、大きな評判をとったビジネス書でも、その本が提案するものが具体的であればあるほど、数ヶ月も立たないうちに使えなくなってしまうことに共通していて、「抽象化」された手法ほど、読み取る上での裁量というか、余白の部分が大きくて、汎用性が高いことの現れでもある。

もっとも、その対応というのが

そんなマルチプル時代を最大限に楽しむには、思考や発想をマルチプルにする必要があります。 つまり自分の専門領域にこだわることなく、専門分野の境界を越えようとしてみることです。 そのためのひとつのキーワードが「複眼思考」 です。

ということで、「専門をとことん極める」ではなく、「専門を極めつつも、周辺に浮気する」といった、少々気まぐれな対応が必要になるようで、真面目な人には顔をしかめられてしまうかもしれず、さらには、

適切な意思決定や適切な問題解決には、情報がたくさんあったほうがいい、と多くの人は考えます。しかし、実際には情報量が増えれば増えるほど、僕たちは思考停止してしまいがちです。

こうした状況を防ぐひとつの考え方として、「アンラーンする」 というものがあります。アンラーンとは、「知識」という余分なゼイ肉を削ぎ落としていくことです。

と、今までのできるだけ広範囲に、より多くの情報を集めることを至上とする行動形態を戒めてもいるので、今まで精密に計画を練ったり、精密な市場調査に邁進してきた方々は注意を願いたいし、どうやら、今まで「王道」とされてきた手法とは、ちょっと道筋が微妙に離れているようである。

ともあれ、本書によれば、なにより肝心なのは

なかには、すでに知っていること、やっていることもあるでしょう。あるいは、それは自分にはできそうにない、というものもあるでしょう。
しかし、習慣を見直すとは、そうやって感じたことを一つひとつ立ち止まって、より自分に負荷がかかる方法へとバージョンアップさせていくことです。

今の自分を超えたいなら、よりしんどい方法を選ぶ。でもそれでは続かないから、それをいかに楽しめるか。ゲーム化できるかを工夫する。その試行錯誤の繰り返しが習慣をつくります。

というように、アドバイスをもとに習慣を一つ一つ「稼ぐ」方向へ変えていく、といった結構、地道な方法が必要であるらしい。「稼ぐ」に「王道」はない、ということなのであろう。本書のアドバイスの数々を、地道に、きちんと試してみましょうか。   

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