裏から見れば、ローマ帝国の民族派弾圧物語ー「まんがで読破 ガリア戦記」

「まんがで読破」のシリーズは、現在のところ139冊刊行されていて、「こころ」「人間失格」といった小説や「日本書紀」「神曲」「平家物語」といった古典からアダム・スミスの「国富論」やケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」までの幅広いジャンルのものを扱っているのだが、いわゆる批評家や評論家的な人の評判は「・・・・?」といったフンイキが強い。

当方の思うのは、このシリーズに収録されているものの大半は、おそらくは「文章」のみでは、ほとんど読まないものであるに間違いなく、原本への忠実性の点では「?」がつくところも多々あるのだが、原書へ向かう「ハードル」を下げる効果があるのは間違いない。

この『「まんがで読破 ガリア戦記」(イースト・プレス)』もそんな類で、当方は無鉄砲にも「岩波文庫」版の「ガリア戦記」に挑んだことがあるのだが、古代の部族の名前がどうにも頭に入らなくて頓挫した思い出がある。

【構成は】

カエサル
ガリア戦記
ゲルマニア遠征
ブリタンニア遠征
ウェルキンゲトリクス
内乱の陰

となっていて、原書は、ユリウス・カエサルのガリア総督時代のガリアやゲルマニアとの戦いを、元老院に報告したものをもとに編纂されたものであるので、当然、本書の著者や時代背景紹介のような部分や、続編の「内乱記」に描かれている

【ローマ帝国の侵略記録として読んでみた】

原書は、カエサルがガリアやゲルマニアの諸部族を打ち破り、ローマ帝国の支配を確立する記録なので、本来は「侵略」の記録として扱うべきものではなく、本来は、当時のローマ帝国と周辺のヨーロッパの記録として読むべきなんだろう。

ただ、原書の形だと部族名や地名を追うのが精一杯なのが、「マンガ」の形で表現されると、この「戦記」が、大国による侵略の様子がリアルに伝わってくる。例えば、ガリア北東部(今のベルギーの辺?)に住むネルウィィ族との戦いで

ローマ軍は体制を立て直すや負傷兵や先に逃亡していた者までもが奮闘し、次々と敵の死体の山をつくっていった

この戦で成人男性のほとんどを失ったネルウィィ族は降伏を申しいれ

なんてところは、ローマ軍が盛り返した途端に起こった逃亡しかけていた兵士も含んだ「大殺戮」「大略奪」であるし、ガリア人の総決起を率いた「ウェルキンゲトリクス」との戦いは、老練なカエサルに翻弄されて敗れる、若き民族派のリーダーの敗北によるガリア独立勢力の壊滅でもある。

【終わりに】

「古典」の原本ともなると、内容を噛み砕いて読むのが精一杯で、横の視点から「読む」なんてことはできないのだが、「マンガ」の形で書いてあると、そんな風な読み方もできるもの。
このシリーズは、Kindleでもセールのことが多いし、Kindle Unlimitedの対象にまっているものも多い。見つけたら、「ちょい読み」してみてもよいと思いますね。

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