プレイングマネジャー向け「説教」にならない部下の「コーチング」のコツ

先だって、レビューした『中原淳・金井壽宏「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」(光文社新書)』では、マネジャーのほとんどがプレイングマネジャーとなりながら、プレイヤーとしての実績を求められる部分が多くて、「指導」という場面が弱くなっているということを紹介した。
 
でも、今どき「管理」だけに特化できるマネジャーは「絶滅危惧種」に近くなっているという状況は間違いなく、全ての「プレイングマネジャー」の仕事に「部下育成」が含められるのが大多数であろう。でも「仕事をするコツ」は今まで教えられてきていても、「人を育てるコツ」はなかなか伝授されることが少なく、以外に時間をとることに驚いている人も多いはず。
 
同書から、「プレイングマネジャー」向けの「部下指導のコツ」的なところを抽出してみた。
 

【指導のコツは4つ】

 
まず、(理屈っぽく)分類されているのが
 
第一に、タイミングを考える
第二に、成功経験だけでなく、失敗経験も語る
第三に、プロセス(出来事の連鎖)をつまびらかにする
第四に、吟味や反論の可能性を認める
 
ということで、第一のコツは「文字通り」であるのだが、第二のコツ以降はちょっと補足しておきたい。
 

【「失敗体験」を積極的に語る】

 
第二のコツの「失敗体験」を語るべきなのは、上司による部下指導、特に「呑み屋」での部下指導は、自慢話、内輪話に陥ることが多いので、それを防止するためなのだが、失敗体験を多めに語ったほうがよい。というのが、成功体験というのは、それぞれの条件(幸運なことも含めて)に依存することが多いのだが、失敗には多くの共通点があるので、むしろ、その共通点を知ってもらうほうが、若手職員がこれから事をなすのに、前轍を踏まないようにサポートできる。さらに成功体験でも中には「プチ失敗」あるいは「失敗の未然防止」的なことは隠れているので、そこらを中心にしたほうが良いと思う。
「成功体験」は「失敗」とあわせて伝えるほうが、しっかり人の心には残りますので。自慢話をしたい向きもご安心を。
 

【背中を見せる】

 
第三のコツは、そのまま読めば、「5W1H」、自分が思ったことと教訓をはっきりさせなさいということなのだが、「言葉」で語るよりも、プレイング・マネジャーであれば、その姿を実地に見せる、という方法を組み合わせたほうがいい。
 
同書でも
 
彼ら彼女らがプレイングしている様子」は、つねに部下の視線にさらされている。となると、マネジャーは直接、教えてはいなくても、部下の方ではマネジャーの行動の観察を通じて、「そうか、あんなふうにプレイすればいいのか」というふうに学ぶ機会を得るのではないだろうか
 
とか
 
マネジャーがプレイングな状況にあるからこそ、何かを言われた部下は、言われた内容が腹に落ちるのではないだろうか。「プレイしているあの人が言うんだから、そうなんだろう」という感じ
 
とあって「背中を見せる」ことの効果を挙げている。この「背中を見せる」のは、いわゆる「管理」だけをしているマネジャーには出来ないことなので、「プレイイング」している現場を使えるという、プレイング・マネジャーの利点をしっかり使ったほうが良い。ただ、最近は人員も限られて、現場に部下を同行させられないことも多いから、背中の「見せ方」は、リアルな方法だけでなく、いろいろ考えないといけないな。
 

【持論に拘わらない】

 
第四のコツには
 
経験はつねにどんな状況にもあてはまるとは限らない。上司の経験の中には、今のビジネス環境に照らせば時代遅れになってしまっているものもある。そのエピソードが今に通ずるものななのか。教訓に妥当性があるのかを、きちんと部下と話し合えることが重要になる。
 
と同書も補足されているのだが、これを担保するの「プレイングマネジャー」側の心構えとして、「持論に固執しない」ということが必須で、同書では
 
貴重な経験を積み、十分な振り返りをへてせっかくつくり上げた持論でも、それが絶対化し、安定化し、変わらぬものになったとき、あるいは、いつでも、どんな人にも、どんな状況にも適用されると思い込んでしまったとき、それは「危険な持論」に変貌する。
 
と「第2章」で「持論」が障害になる場合が記されている。
 
ここで「持論に固執しない」とあえて補足したのは、経験に基づいて抽出した「持論」がきちんとしていなければ、部下への説得力もないし、部下の「ハウツー本」で手に入る方法論を求めてはいないので、効果的な指導に「持論」は不可欠なのだが、オールマイティに使える「持論」は存在しない、と思って置く必要があるからである。「指導」が「説教」に変化してしまわないためにも、ここの辺はこころしておかないといけないでしょうね。
 

【すべてのプレイング・マネジャーへのエール】

 
以上、『中原淳・金井壽宏「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」(光文社新書)』から抜粋しながら、プレイング・マネジャーの部下指導のコツをまとめてみた。「働き方改革」といわれながら、「改革」の効果が一番届きにくいのが、この層。こうしたTipsを参照していただいて、自己防衛を図ってくださいな。
 

【関連記事】

「組織内の教育」を再生する方法は?ー中原淳・金井壽宏「リフレクティブ・マネジャー」

コメント

タイトルとURLをコピーしました