「見初」の周りの不思議の出来事はさらにパワーアップするのだった ー 硝子谷玻璃「出雲のあやかしホテルに就職します 2」(双葉文庫)

ベルガールとして就職した、妖怪や神様といった「怪しいもの」が見える娘「時町見初(ときまちみそめ)」が就職した島根県の出雲にある、人と人外が混合のホテル「ホテル櫻葉」でおきる、「不思議」と「大騒動」のお話を綴った「出雲のあやかしホテルに就職します」シリーズの第2弾である。

【収録は】

第一話 黄昏の夢にて
第二話 神様のために
第三話 温かさに焦がれて
第四話 恋と愛のカクテル

となっていて、就職後6ヶ月経過し、時は10月。出雲は「神在月」ということで、日本各地から、神様がやってくる時期を迎え、「見初」周辺の騒動も、ますますパワーが増加するばかりなのが、今巻である。

【あらすじと注目ポイント】

第一話の「黄昏の夢にて」は、見初の学生時代の友人・平野由衣が、出雲にやってきたところでの話。彼女は、ホラー漫画家の「石上逢夜」こと「石上ひふみ」(「石上逢夜」はホラー漫画家ながら若い可愛らしい女性、というお決まりの設定なんである)のアシスタントになっているのだが、今回の出雲旅行は、石上ひふみと一緒の旅行。
そして、ひふみが出雲に来た理由は、子どもの頃、彼女が出会っていた妖怪(しゃべる靴下猫)の実在を、おばけが出るという「櫻葉ホテル」に泊まって確かめたいから、という理由からである。普通なら、こういうのはスルーされて終わり、というところなのだが、偶然、「布留」という黒猫の妖怪もホテルも宿泊していて・・・、といったところで話が展開していくんである。

第二話の「神様のために」は、「神在月」に全国からやってくる「神様」たちを、どう念入りにもてなすか?という社内会議からスタート。通常のホテルだとこんなことはないのだろうが、人・神・妖怪混合のホテルならではのことではある。
趣向のほどは、神様でも滅多に入れない神域内の「温泉招待券」やくじびきといったところなのだが、天狗の緋菊の策謀で、冬緒が隠していた恋心をさらけ出させられるところで、当初のクールな冬緒のキャラがどんどん変質していっているのが如実でありますね。

第三話の「温かさに焦がれて」は、雪神様の子ども・雪凪と人間の女の子の交流の話。彼は、その女の子にマフラーの作り方を教えてもらおうと家を出たのだが、道に迷って、櫻葉ホテルにたどり着く。彼に、マフラーの編み方を教えているうちに、彼と女の子との交流が途絶えた理由も明らかになるのだが、その陰には、「雪神」に関する「雪神は雪を司るだけではない。凍てついた心の持ち主なのだ」という言い伝えの真相が関係していて・・・、といった展開。
最後のところの、雪凪と交流のあった女の子の「ゆきのようせいさんが、きてくれたの」という言葉にほっとしますね。

第四話の「恋と愛のカクテル」は、ホテル櫻葉の、美人で威勢のいい女性バーテンダー「十塚海帆」の恋バナ。もっとも、海帆のほうに「恋」の実感があるかどうかは、最後まで明らかではない。
話の大筋は、彼女に夢中になっている客の「稲野京次」が、海帆への恋愛感情が引き起こす話で、実は人気美容師である「京次」のファンの女性の想いが、闇の世界へ、海帆や天樹、そして、見初たちを引き込んでいく話。ホテルのレストランのソムリエ・火々知の真実の姿の時の強力さがいかんなく発揮されていますな。

【レビュアーから一言】

見初ちゃんも6ヶ月経って、「あやかしホテル」に慣れてきたと思ったら、周りに起きる出来事がさらにパワーアップしてくるというのは、彼女の持っている隠された力のゆえであろうか。ただ、騒動を起こすだけでなく、様々な揉め事をうまく調和させていくのも、彼女の隠された力ゆえのような気もする。見初ちゃんのさらなる活躍が楽しみでありますね。

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