ホテル櫻葉に新しい「ハウスキーパー」が誕生いたします ー 硝子谷玻璃「出雲のあやかしホテルに就職します 4」(双葉文庫)

今巻以降の注目点は、

触れるだけで妖怪や幽霊、神様の力、感情までも操ってしまう。そんな能力を有していた陰陽師の一族、四季神家。見初はその四季神の血を引いているだけでなく、不完全ながらもその『触覚』の能力を使うことができる。
しかも、現在の四季神家の中で、その力を使えるのは見初ただ一人。

と前巻で明らかになった「見初」の能力がどういう波紋を巻き起こすか、というところであろう。前巻では、すでに失われていた「能力」ということであるので、これがどういう具合に展開されていくかは楽しみですな。

【収録は】

プロローグ
第一話 蓮沼家の人々
第二話 一輪の華と二人の男
第三話 深き山の中で山神が一人
第四話 狸の嫁入り
エピローグ

となっていて、今巻では、「見初」力の披瀝は、今巻ではちょっと少なめ。
最終話でこの力の威力が垣間見えるのだが、小さな女の子の山の神・柚枝の力を暴走させる方向え発揮されているので、手当たり次第にマシンガンを連射している状態で、危なくて仕方がない状況である。
そして、プロローグで永遠子が熱中症にかかる話の滑り出しに使われる程度に、そんなに大きな意味はありませんので念の為。

【あらすじと注目ポイント】

第一話は陰陽師のトップである四華のうちの「味覚」の力を司る「蓮沼家」の当主夫妻と次期当主の男の子、そして蓮沼家の使い魔の天狗の4人が、山陰旅行のついでにホテル櫻葉にやってくるのだが、次期当主の男の子は極度の少食で、食事を大量に残すのが続いている。
これを心配した蓮沼家の使い魔の羽鬼という鳥の妖怪と八手という巨体と八本の腕が特徴の妖怪が、ホテル櫻葉の名シェフの桃山を誘拐して、男の子の少食を治す料理をつくらせようとすることで始まる騒動。
男の子の少食は、体調が悪い時に学校給食を無理に食べさせた担任教師が転校させられたことのトラウマが原因らしいのだが、桃山はその治療法で「食べることが苦手になってしまった時は、食べること以外で食べ物を好きになればいい」と提案する。さて、その方法は?、というのがこの話の主筋ですね。

第二話は、ホテル櫻葉に宿泊にやってきた「死神」と、彼の昔からの知人の老人との話。この二人は、昔から何かを賭けて、将棋で勝負しているようなのだが、一体何を賭けて、その謂れは?といった筋で展開する。もともとは美人の女性を巡っての争いらしいのだが、いつの間にか、それは二人の腐れ縁的な友情に発展していて、といったところ。

第三話は、山の神サマと人間の女の子が埋めた「タイムカプセル」にまつわる話。その山では最近、人間がはいると、宝物を探せという妖怪がでてくる。さて、その宝物って何?なぜ妖怪が探させようとしているのか?というのが出だしの謎。これと並行して、ホテル櫻葉での「妖怪」のハウスキーパーを雇うための面接が始まっている、という設定。
宝探しの関連して、気の弱い女の子の「山の神」さんが登場するのだが、宝探しと従業員の採用とがどう関連してくるのか、は原書で確認をしてくださいな。

第四話は、古からの仇敵同士である「狐」と「狸」の話。九尾(きゅうび)ならぬ七尾(ななび)の狐の琴葉さまが、狸でありながら狐に扮して、美味い稲荷寿司の店を出している「木乃」という狸の妖怪の恋を叶えてあげる話。話の中途で、琴葉さまを我が物にしようとする「狐」の妖怪との大立ち回りと、四季家の「触覚」の能力を全開し始めた「見初」に強さが光りますね。

【レビュアーから一言】

「見初」の隠された能力は”さわり”ぐらいしか発揮されないのだが、山の神の「柚枝」様が可愛らしいのと、「ハエトリグサ」といった植物を使った「ワザ」を出してくれるので、まあ満足としておこう。
「エピローグ」で四華の一つで、今一番凶暴で、勢力のある「椿木家」の関係者らしいのが、出雲空港に降り立つところで終わっていて、次巻での波乱を予測させていますな。

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