マイナスの「感情」をおし殺さずに働ける方法はコレ ー 関屋裕希「感情の問題地図」(技術評論社)

沢渡あまね氏を中心に展開されている「問題地図」シリーズであるのだが、今回は臨床心理士で「産業精神保健「「職場のメンタルヘルス」を活動テーマの中心として活躍している筆者によるのが本書『関屋裕希「感情の問題地図」(技術評論社)』。

心理学の専門家によるものであるせいか、今まで「仕事」「働き方」「システム」「マネージャー」といった外形的につかめるものを中心に分析・提案されていた「問題地図」シリーズなのだが、今回は、ぐっとパーソナルな話題に踏み込んで、職場で働いてる時の、我々に巻き上がってくる「感情」の問題にスポットライトを当てている。

【構成は】

はじめに
 〜「感情的にならない」「感情をなかったことにする」
  そんな感情との付き合い方は、もったいない
1丁目 怒り
2丁目 哀しみ
3丁目 落ち込み
4丁目 不安
おわりに 感情とうまく付き合うための4つのコツ

となっていて、本書の対象としているのは、働いていて「かーっ!」であったり「う〜っ!」や「く〜っ!」といった「マイナスの感情」の取説が扱われている。
で、本書の「おっ」と思うのは冒頭のところで「感情は悪くない」とした上で

心理学の研究で、感情は、私達が生き延びるために必要で大事な機能だということがわかっています。(P6)

として、よくある「職場の心理学」本のように、じっと我慢させたり、相手の心を配慮させたりして、自分の感情をぐっと押し殺させる方向に行かないのがよいですね。

 

【注目ポイント】

本書で書かれてるボリューム的に多いと思われるのが「怒り」のところで、うーむ、職場で一番目につくのは「怒鳴っている上司」、「文句を言う同僚」、「そっぽを向いて言うことをきかない部下」といったところなので、さもありなんという感じである。

ただ、職場の和を壊す原因ともなる「怒り」について、否定的な評価だけで終わらないのが本書のいいところで、「怒り」の本来の機能は

「自分の大切なものを守る」
「境界線を引いて、自分の領域を守る」(P23)

と一定の評価を与えた上で、「怒り」を扱う基本原則として「怒りを感じることと、それをどう外に表現するかは分けて考える」といったようにいくつかの手法を提示してくれるのが、本書の実用的なところでありますね。
そして、「怒り」を表現する手法として「アサーティブネス・スキル」ってのを提案していて、具体的には

①Describe:客観的に状況を描写する
②Explain:自分の主観的な気持ちや考えを説明する
③Suggest:相手に望む行動や解決策を提案する
④Choose:相手の肯定的、否定的な反応を予測し、代替の選択肢を示す

という四段階を踏む方法らしいのだが、これ以上レビューすると営業妨害になりそうなので、詳しいところは原書で確認してくださいな。

このほかの「哀しみ」「落ち込み」「不安」といった感情についても、「怒り」の章と同じように、わかりやすく、具体的な処方箋が提案されているので、お得感がありますね。

【レビュアーから一言】

働いていると、喜びや達成感などのプラスの感情ばかりではなく、むしろ本書でとりあげる「怒り」「哀しみ」「落ち込み」「不安」といったマイナスの感情のほうを感じることが多いはず。かといって「何事もプラス思考で考えろ」と言われても、こちとら、そんなノーテンキじゃねぇ、というのが多くの人の本音であろう。

大事なのは、そうしたマイナスの感情を心の隅に押し込んでしまうのではなくて、うまく「付き合っていく」コツを身につけることであろう。ちょっとネタバレすると、本書の最後の方で「どんな感情にも共通する、うまく付き合うための4つのコツ」として、

①その感情の意味や役割を知る
②感情を抑え込まずに、感じる
③自分のいる状況を俯瞰する
④感情がくれる手がかりに合わせて行動する。

があげられているのだが、これを具体的に職場の中で実践する方法は、ぜひ、原書で読んで、自ら確認してみてくださいな。

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