「椿木家」の次期当主が、「見初」の力を呼び覚ます ー 硝子谷玻璃「出雲のあやかしホテルに就職します 5」(双葉文庫)

「出雲のあやかしホテル」シリーズも5巻目となったのだが、今巻は、4巻目の最後で、冬緒の実家の一族である「椿木」家の次期当主が、配下の式神を引き連れて、出雲空港に降り立ったことを引き継いで、なにやら不穏なスタートである。
さらに、プロローグで、記憶を失ったらしい母親と、彼女の娘らしい存在のやりとりがなにやら「昏い」始まりで、少々、陰鬱な出だしである。

【収録は】

第一話 藍の花は枯れることなく
第二話 赤と白
第三話 青いあかりは儚く煌めいて
第四話 時は止まることなく進み続ける
番外編 テレビで学ぶストーカー撃退法

となっていて、前半は、四華の有力一族・椿木家の次期当主は、出雲にやってきた理由と、椿木家の過去のスキャンダルっぽい事件に関する話。後半の二話は、月世界の住人が出雲にやってきたり、出雲の「神在月」の話であるのだが、底のところに、「見初」の四季神としての「力」が見え隠れしていますな。

【あらすじと注目ポイント】

第一話は、風の子の姉弟がホテルにやってくるところから始まる。ここに、冬緒の実家のいち族で、妖怪たちを無情にも祓うことで有名な椿木家の次期当主・雪匡が同時期にやってくっるのだから、話が一挙に面倒になる。というのも、同時期に出雲市の子どもたちの多くが熱を出すという変事が起こっていて、それは、この風の子たちを自分の子供と思いこんだ「妖怪」がからんでいるらしく・・、といった展開。

ここらで、見初の四季神の一族の力がだんだんと発揮され始めますね。

第二話は、引き続き、椿木雪匡の関連する「椿木」家の話。ここの家は、やたらと妖怪を祓うぐらいに「獰猛な」一族であるので、腕利きの「陰陽師」や、力の強い「式神」がうようよとしているらしく、なかでも力の強いと言われつつも、一族を裏切り、式神を見捨てた陰陽師の成れの果てが、ホテル櫻葉の支配人・柳村ということが判明するのが本話。

もちろん、彼がそうした理由はあって、というのがこの話の肝なんであるが、そこのところは「獰猛な一族」はそれゆえに様々な業を駆け込むよね、一時期のグローバル主義の結末に似てますな、といったのが当方の感想。

第三話は、月からの使者が、ホテル櫻葉のある出雲にやってくる話。その使者は、妹の病を癒すために、月の掟を破って、地球に訪れた、という設定である。

この病を癒やすのに、「月の兎」の末裔である、見初のペット、兎妖怪の子供「白玉」の力が解放されるのだが、その力の発揮にも、見初の四季神の力が導火線となる、ということなので、見初の隠された力ってのは、どれほど威力があるのか、ってなことを想像させるすじだてでありますね。

第四話は、出雲の地の恒例の「神在月」の「神議(かみはかり)」の後の、ホテル櫻葉での「大打ち上げ」にひさびさにやってきた、道祖神の老婆神の話。彼女は若い頃、人間の青年と関わりをもったことがあるのだが、その青年は今・・・、といった展開。

さらには、四季神家の守護神である「ひととせ」様が遺した「念」も表れ、彼女と天狗・緋菊の過去のつながりを暗示するところで終わっていて、次巻以降へつなぐ伏線がはられていますな。

番外編は、ホテル櫻葉のホールになぜテレビが設定されていないのか、の種明かし。まあ、デザートのような位置づけで。シリーズの話の主筋とはあまり関係ない話なので、難しいことを考えず、女性バーテンダー・海帆の蛮行を楽しんでくださいな。

【レビュアーから一言】

 

まあ、結局のところは、椿木家の次期当主も、評判ほどの「悪辣」「冷酷」ではなかった、というところなんであるが、「見初」の持つ力は、今巻でも片鱗しかでてこないので、これがいつ開放されるのか、とか、この力を狙った何かがうごめくのか、といったところは次巻以降の「お楽しみ」というところであろう。

今巻は、「椿木家」に隠されていた秘話であるとか、「白玉」の先祖と能力とかをおかずに、見初ちゃんの活躍を楽しんではいかかでありましょうか。

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