紙書類の山を、なんとかしたいビジネスマンの特効薬はコレ ー 木山泰嗣「膨大な資料を迅速・正確に処理できる 情報をさばく技術」(日本実業出版社)

法律家(弁護士)というのは、裁判にしろ、相談業務にしろ、膨大な資料に囲まれて仕事をしているわけで、そういう業種の人が、どんな形で、新しい分野や新しいクライアントの資料・情報を整理し、重要なところを見分けているのか、というところは、ビジネスマン誰しも興味があるところ。
特に、厄介なのが、デジタルな検索ができない「紙書類」の山に出くわしたときに痛感するもので、現役の弁護士による「大量の情報を、素早くさばくためのヒントを、1冊に凝縮しました」というのが本書『木山泰嗣「膨大な資料を迅速・正確に処理できる 情報をさばく技術」(日本実業出版社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 落ち着いて対応するための「心構えと時間管理」の技術
第2章 「必要な情報を収集する」技術
第3章 「適切に整理する」技術
第4章 「分析して見分ける技術」
第5章 「必要な情報だけ素早く読む」技術
第6章 「内容(エッセンス)を理解する思考」の技術
第7章 重要な事項の「根拠をつきとめる」技術

となっていて、後半の第6章、第7章のあたりは、どちらかというと「法律家」向けに書かれている印象があって、当方的には中盤あたりまでを重点的に読んだところである。

まず、いかにも法律家っぽいな、と思ったのは

まずは関連情報が含まれていると思わる情報を、大量に手元に置くことが必要です
(略)
1冊ですべてを手に入れようとするのではありません。たくさんの書籍の中から、必要な情報をつまんでいく感覚が必要です(P48)

購入した本は、単なる「地図」だと思うことです。
(略)
やり方はかんたんです。あなたが調べようとしていることについて、関連するキーワードを洗い出します。そのキーワードを本の後ろについている「事項索引」で、かたっぱしから調べましょう。
(略)
アナログ情報なので、めんどうくさがらずに「事項索引」に挙げられているページすべてを開いて、その周辺を読み込みます。このときは本を読むという感覚ではありません。必要なことを調べるという感覚で、目を動かしてください(P51)

といったところで、このあたりは膨大な裁判記録や証言、捜査書類といった紙書類の中から、自分にとって重要で必要なところを抽出していく技として参考にしておくべきだろう。特に、新しい分野のことを短期間に知識を得て、モノにするには、入門書からきちんと読んでいくというよりも、情報の山の頂上に落下傘で降下するよう、こうした方法が有効ではないかと思った次第。これは

最初に「資料一式を整理する」ことにトライしましょう。・・時間内にできる範囲でかまいません、全体を見渡して、どのような資料なのかを、およそでいいので把握します。
資料全体を整理するときにすべきことは、どのファイルに何が書かれているかを知ることです。1冊ごとのファイルが分厚い場合には、さらに、その1冊のファイルのなかに、どのような資料や情報があるのかを知ることです。
中身を一挙に読み込むよりも、まずはどこになにがあるのか「全体を見渡す」ことに注力しましょう。

といったところにも顕著で、紙書類の情報を整理するコツは、「読むもの」と「読まなくていいもの」の選別と、資料の「目次づくり」「文献情報メモ」づくりにあるようだ。

加えて、「関係図」と「時系列メモ」、「事案の概要がまとめられた「コアとなる一枚」探し」といったところは、資料の樹海を泳ぎ切るのに役に立ちそうなツールなので、原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

本書は「紙書類」中心に情報の整理のノウハウ、メソッドが整理されているので、デジタル情報については、別のものを参照する必要があるが、デジタル化によって「紙」が減るのでは、といった予測がされていたこともあるのだが、当方のみるところ、ほとんどの職場で一向に紙が減っていないという現状のままで、私達を取り巻く情報のほとんどは未だに「紙」のものが大半であるのは間違いない。

法律家の手によるものなので、ところどころ「裁判」や「法理的な係争処理」の雰囲気を漂ってはいるのだが、フツーのビジネスマンが使えるところもたくさんある。

ドカンと書類を目の前に積まれて、「後はよろしく」と言われた経験のあるビジネスマンには特にオススメでありますね。

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