”売れるモノは何か”から、プランニングのヒントを考える ー 水野学「アウトプットのスイッチ」(朝日文庫)

商品企画、パッケージデザインなどなどブランドづくりについて幅広くコンサルティングをして活躍している、クリエイティブ・ディレクターの水野学氏が、

「『アウトプットの質』が、売れるか売れないかを決める」

と断言して、そのアウトプットの質をどうしたら上げるにはどうしたらよいか、どうすれば人の心に刺さる商品を生み出せるのか、そして、そこへ至る近道は、といったことを語ったのが本書『水野学「アウトプットのスイッチ」(朝日文庫)』である。

本来の目的は、新しい「商品開発」に携わる担当者であったり、デザイナー向けに書かれたものと推察するのだが、「仕事のアウトプット」を高めるための技術は?、といった視点で読めば、多くのビジネスマンの仕事に応用が可能であろう。

【構成と注目ポイント】

構成は

Prologue アウトプットとは何か
Part1 なぜアウトプットが大切なのか
 人はアウトプットしか見ない
 企業側の「思い」が問われる時代
 ”売れる”をつくる三原則
Part2 ”売れる”をつくる『〜っぽい分類』
 しべてのモノは”ポジティブ分類”できる
 アウトプットの”田がを外す
 本質とシズルを見極める法① 消去法で検証する
 本質とシズルを見極める法② 目立なかった長所を引き出す
Part3 アウトプットの精度を高めるプロセス
 イメージから本質を抽出していく
 消費者の声を活かしたアウトプットとは?
 多様なアウトプットのための舞台づくり
 トーン&マナーとシズルを両立させるー台湾セブン・イレブン
対談 生物学者 福岡伸一氏×水野学
 アウトプットは、絶え間なくインプットへと続く
Epilogue 本物を求める時代のアウトプット

となっているのだが、まず最初に注目すべきは、”売れるもの”をつくるには

認識を改めたほうがいい点はあります。
一つは、「ライバルは同業他社である」という誤解。
さまざまな市場がクロスオーバーし、グローバル化が進んでいくと、これまでやってきたマーケティングや安易な差別化では、立ちゆかなくなっていきます。逆説的ではありますが、だからこそアウトプット次第で抜きんでることもできます。

といったところで、アウトプットの質を問う場合、ともすれば身近な同業種のライバル企業やどうかすると同じ社内に対抗相手を見出して、彼らに優越することが目標となったりするのだが、視野を低く構えてはいけないという戒めでもある。

その上で、新しい要素を追いがちになる傾向に対しては

”売れる”をつくる三原則を思い出してみてください。「原則③ 発明」の中で、”必要なのに、いままでなかったモノ”はごく少数の画期的発明だけですし、仮にしおうだとしても、人が想像できるようなものです。
世の中のほとんどの人がつくり出そうとしている〝売れる〟は、すでにあるモノの中に潜んでいるのですから、既存の〝何っぽい〟に当てはめることで精査できるのです。

としているところには、当方は、基本の大事さ、足元をきちんと分析する大事さを受け取ったのであるがいかがであろうか。

さらには、

当初のブランディングでつくった言葉だけが一人歩きしていないか? 商品だけが一人歩きしていないか?
このチェックが常に行われていないと、会社のブランドも商品の売上げも低迷します。しかし、この状態の会社は驚くほど多いのです。売れるものにはその年だけの流行もあり、時代の雰囲気の産物もあります。これらを僕はブームと呼ぶのですが、売上げだけを重要視してブームを追っていくと、本質を忘れて結局〝売れないスパイラル〟にはまり込んでしまいます。

といったあたりには、商品開発だけでなく、あらゆるプロジェクトやイベントを企画する際に、心に止めて置かなければならないものだろう。

【レビュアーから一言】

本編とは別に、生物学者 福岡伸一氏との対談も掲載されているのだが、実は、これが結構面白い。全く異なる分野の「才人」がぶつかり合うと、こんなモノがでてくるんだ・・、というのが満載で

何かを目指して、それに向かっていくと、それは結局チープなものにしかならないと思うんですよね。効率優先とか、最短解みたいに見えるけれども、それは本当の解ではない。「今からあの地点に行くためにどうしたらいいか」というとき、人間が持つ想像力ってたいしたことないと思うんです

に「ふむふむ」と思ったり、

進化というのはものすごく精妙にできてきたように見えるけれども、それは実は負けたものの歴史がまったく見えなくなっているからですよね。だから、合理的に点をつないでいこうというあり方自体がさもしい

といったあたりには思わず笑ってしまったりするんである。

新進気鋭のクリエィティブ・ディレクターの「アウトプット」の話となる、妙に身構えてしまうんであるが、フツーのビジネスマンは、気楽に、「プランニング」の参考に、といった感じで読むと、掘り出し物があるかもしれんですよ。

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