「ひより」と警察OBのおじさん軍団、テロリストの爆弾犯と対決 ー 加藤実秋「メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト」(角川文庫)

「メゾン・ド・ポリス」というシェアハウスで共同生活を送っている、「夏目惣一郎」をはじめとする警察官OBたちの全面的なバックアップのもと、女性新米刑事の「牧野ひより」が、難事件を解決していく「メゾン・ド・ポリス」シリーズの第3弾。

第2弾までで、行方不明となっていた父親との再開を果たし、父親が姿を隠さなければならなくなっていた原因もなんとか除去したところで、大手を振って刑事として頑張っていこうとする「ひより」なのだが、今回、捜査に当たるチームの一人が、定年間際の、女性警察官を一人前に扱わない「全時代的」な人物で・・、といった展開の長編仕立ての今巻である。

【あらすじと注目ポイント】

今巻の事件のスタートは、高校生が、デート中の公園で不審なバッグを発見するところからスタート。中を開けると

プラスチック製の白く小さな長方形の物体。中央に横長の液晶画面があり、黒い数字が表示されている。
(略)
白い物体の下には、直径三センチ、長さ十五センチほどの茶色い紙の筒があった。筒は全部で五、六本あり、上下の端を黒い粘着テープで束ねられたいた。筒の口も同じテープで封をされていて、白い物体の上からは赤と青の細いコードが延びている

といった様子の「爆弾」が仕掛けられている、という設定なのだが、警察がかけつけて調べると、紙筒の中は空で、火薬は入っていない、という設定。

なんて人騒がせなと思っていると、どうやら類似の「偽・爆弾」が銀座の映画館や、八王子の大学キャンパスでもおきているらしい。さらに、新宿のデパートでも偽・爆弾騒ぎが起き、今回は小さなパニックが起きてけが人が出たため、イタズラときめつけて積極的な捜査をしなかった警察に批判が高まっていく。

世間の批判を浴びて、事件のあった柳北署に捜査本部が立ち上げられるのだが、「ひより」は捜査本部から外された警備課の「梅崎」とコンビを組まされる。この梅崎が、先の「前時代的」な人物で「ひより」を捜査の相棒として認めようとしない、というわけなのだが、その原因が以前、チームを組んでいた女性警察官を自分の目の前で殉職させてしまった、というわけがあるので、一方的な非難もできない、というところである。

事件のほうは、デパートの事件で偽爆弾のしかけられたバッグの中から「薬臭いんだけど、ちょっとだけフルーティー」な「アクリル」の臭いがしたということで、アクリルの製造工場や加工現場、はてはアクリルの水槽の設置を殺っている会社などを調べているうちに、
今度は病院で「爆弾騒ぎ」がおきる。

また「偽」かと思っていたら、今度は本物の爆発が起きて、ひよりの同僚の原田が負傷してしまう。そして、この爆弾の第一発見者であった人物・真鍋が、実はこの爆弾をしかけた犯人で、その理由は

人間は、自分たち以外の生命を物として扱っている。とくに海。・・・人間に、彼らの自由と命を奪う権利はない。俺たちは彼らを解き放ち、奪った命の代償を支払わせるんだ

という、少々分かりづらいことを言って、自殺してしまう。

どうやら、このテロリストの目的は「海洋生物の保護」であるらしイノダが、次の標的になるところは・・・?、といった展開である。

最後のクライマックスのところでは、「ひより」の命がけのドライブもあって、スリリングなアクションも楽しめますね。

【レビュアーから一言】

第一巻、第二巻で、「ひより」を助けて大活躍した「夏目惣一郎」は、今巻ではちょっと影が薄い。そのかわり、熱血の「ガハハ」な刑事であった「迫田」さんが代わって活躍。
さらには、離婚後会っていなかった、迫田の息子が登場。しかも、東大の工学部を卒業してから、今回、テロ組織のメインターゲットになる水族館の水槽の設置会社の社員として勤めていて、事件への関与も疑われる、といった設定で、事件の推理と併せて、この迫田親子の人間模様もまた気になるところでありますね。
事件の謎を解くカギは、「ひより」の悪友である、日替わり放言娘の「ナナ」も犯人を突き止める手助けをするといったオマケもあって、引き続き楽しめる一冊に仕上がっています。

TV放送の方は終了したようだが、「ひより」ファンになった方は、ぜひ、この巻もどうぞ。

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