クールな若手メンバーを加えて、ますます「Club indigo」 は好調 ー 加藤実秋「Dカラーバケーション インディゴの夜」(集英社文庫)

塩谷、晶、憂夜という30歳を超えた経営陣と、ジョン太、DJ本気、犬マンといった「若手」ホストたちで繁盛していた「Club indigo」であったのだが、夜の本番に加えて、ショーとスィーツを提供する「昼間営業」を始めたところ、「若手」以上に若いホストが加わったのだが、若者の間にも世代間対立というのはあるようで、なにかと対立しながら展開するのが、「Club indigo」シリーズ第4弾の「Dカラーバケーション」である。

【収録と注目ポイント】

収録は

「7Days活劇」
「サクラサンライズ」
「一剋」
「Dカラーバケーション」
「レッドレターデイ」

の五話。

第一話の「7Days活劇」は、昼の部を担当する、新人若手ホストの手塚、川谷、酒井が、自転車のブレーキ故障、常連がつくったと見せかけた弁当で食あたり、居酒屋のサンダルが接着剤でくっつかれていて転倒、というアクシデントに見舞われる。彼らは最近、常連客・愛梨と一緒に渋谷の公園で、そこに出没する「エコ女」という妖怪に出会っている。彼らの事故は、その妖怪の「呪い」と信じる愛梨は、次は自分だと怯えている。
「呪い」などあるはずかない、とこのアクシデントを仕掛けた犯人探しに、「Club indigo」のメンバーが乗り出す、という展開。
犯人らしい人物に、この「エコ女」を題材にした演劇の主役に抜擢された、元売れっ子アイドルが浮かぶのだが・・・、という筋立てなのだが、「演劇人」というのは役に溺れるとね〜、という「役者の業(ごう)」に苦笑いする真相である。

第二話の「サクラサンライズ」は、パソコンの購入のため、秋葉原にやってきた晶ほか「Club indigo」のメンバーが、アラビア人青年・カリームを、オタク狩りから救出したことから、麻薬絡みの事件に巻き込まれる話。このアラビア人青年は日本の私立大学の留学生で、日本文化の大ファンで、昔の歌や流行をよく知っている。物好きなお客に受けるのでは、クラブで働くことを許可した晶なのだが、彼はどうやら、大麻の密売に絡んでいるようで、ヤンキーの若者に拉致される。さらには、スーツ姿の男たちも彼を探しまわっていて・・・、という展開。
この「カラーム」ってやつは、ヤバイ奴ではないのか?といった疑惑を高めながら、最後のどんでん返しに驚かされますな。

第三話の「一剋」は、「Club indigo」の仇敵である渋谷警察署生活安全課の「豆柴」こと柴田課長が、カジノバーの経営者からの収賄疑惑で捕まりそうになる危機を救うために、「Club indigo」のメンバーが乗り出す話。
この疑惑は、日頃から警察上層部や、悪徳業者たちから疎まれている「豆柴」を陥れるために仕組まれたものらしく、警察内部に協力者がいる気配である。
「豆柴」の疑惑を晶たちは晴らすことができるのか?、そして、内部の裏切り者は誰?、といった感じで展開する。

第四話の「Dカラーバケーション」は、伝説のホストで、「Club indigo」を実質切り盛りしている「憂夜」の過去の秘密が少し垣間見える話。
話の発端は、「憂夜」を訪ねて、神戸から金持ちの娘さんらしい「水原カンナ」という女性がやってくる。彼女は神戸の老舗宝石店の一族なのだが、そこの社長でおじさんの「秀正」が東京で行方不明になっている、という。彼は以前、過去に店でおきたダイヤモンド盗難+強盗殺人が東京の闇市場にもちこまれたらしいので、その犯人を捕まえるといって上京したらしい。その事件の犯人の似顔絵に「憂夜」がそっくり、なのだが、彼は突然、長期休暇をとっていて行方がわからない、というおまけつきの設定である。
カンナの同情した晶が、店のホストたちを動員して、その

物語の醍醐味は、このダイヤが出品されるオークションの競り合いで、なぎさママと志津香という高級外車専門ディーラーの女性社長が、「女(?)」の闘いを繰り広げ、その後、ダイヤを競り落とした志津香社長が、男たちにそれを奪われそうになる場面で、協同して「戦闘行為」を繰り広がるところ。加えて、清楚な「カンナ」の豹変に、「女性ってのは・・」と怖くなるのは間違いない。

ただ、「憂夜」の秘密は、この物語の肝なので、原書で確認してくださいな。

最後の「レッドレターデイ」は晶さんの誕生日のサプライズストーリーなのでレビューはなし。これまた原書でどうぞ。

【レビュアーから一言】

毛色異なる若手メンバーの参入はあっても、「Club indigo」とその周辺メンバーの、騒々しい活躍ぶりは相変わらずで、謎解きと併せて、派手なアクションシーンが楽しめる、このシリーズの魅力は衰えていない。
さらに、「空也」と「憂夜」のかっこよさは変わらずに発揮されているので、彼らのファンの方も安心して読んでくださいな。

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