晶たち「Club indigo」 メンバー、バーチャルワールドに突入す ー 加藤実秋「ブラックスローン インディゴの夜」(集英社文庫)

「Club indigo」シリーズの第5弾は、このシリーズ初の長編。しかも事件解決のカギとなる舞台は、いつも渋谷や新宿の街のいざこざやトラブルといったリアルな世界が中心であったに対し、今巻では、オンラインゲームの架空の街、というバーチャルな仕立てになっている。

【あらすじと注目ポイント】

物語の発端は、「Club indigo」の最近の常連客となっている「古里真千子」という女性が殺害されることが始まり。彼女は地味なOLで、こういったホストクラブには珍しいタイプの客なのだが、オタク趣味があるのか、DJ本気(まじ)にぞっこんとなっている。

ところが、この女の子が恵比寿の街角で胸や腹を刺された殺されるのだが、彼女が持っていたメモに、「Club indigo」のホストたちに「貢いでいた」ことを想像させる記述があったことから、DJ本気が犯人として疑われる、という発端。

物語の展開としては、そのメモに書かれていた金の単位が「/¥」となっていたのだが、それは「ソリダスエン」という名で、「きゃぴタウン」というバーチャルシティで使われている「通貨」であることがわかる。
そして、その仮想空間に入ってみると「Club indigo」というバーチャルなホストクラブがあり、そのインテリアやホストたちも、リアルの「Club indigo」とそっくりで、かなり繁盛している。
さらに、そこのオーナーである「リンダ」が、「古里真千子」の可能性が高まるのだが、彼女が殺されなければならなかったネット上の「トラブル」とは何なのか・・・、といった感じで展開していく。

晶たち「Club indigo」のメンバーが調べていく過程で、「きゃぴタウン」のサービスを立ち上げた、今風の若手起業家の笈川のいかにもオタクっぽい態度に「晶」たちが撹乱されたり、おとなしそうに見えていた「真千子」ちゃんが意外な野望を抱えていたり、といった感じではあるのだが、最後のところで、真千子殺しの犯人を追い詰めていくところは、いつもながらのアクションシーンが展開されているので、オーソドクスな「Club indigo」シリーズファンもご安心ください。

【レビュアーから一言】

ホストクラブという虚業の世界ではありながら、妙に熱い体育会系のつながりで、ふりかかってくる数々のトラブルや事件を解決してきた、「Club indigo」のメンバーたちが、リアルの「Club indigo」とオンラインゲームの都市内のバーチャルな「Club indigo」の双方を行き来しながら、殺人事件の謎をといていくという展開で、いつもとはちょっと違う風味が味わえるのが今巻。
「Club indigo」シリーズのファンもここらで、物語を味わう「舌」をリフレッシュしてみてくださいな。

Bitly

【このほかのClub Indigoシリーズはこちらから】

渋谷の「ホスト・クラブ」は事件の宝庫 ー 加藤実秋「インディゴの夜」

ホストクラブ「club indigo」は本日も「客」と「事件」で満員です ー 加藤実秋「チョコレートビースト インディゴの夜」(集英社文庫)

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クールな若手メンバーを加えて、ますます「Club indigo」 は好調 ー 加藤実秋「Dカラーバケーション インディゴの夜」(集英社文庫)

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