club indigo改装中に、ホストたちは熱い推理劇を繰り広げる ー 加藤実秋「ホワイトクロウ インディゴの夜」(集英社文庫)

渋谷のはずれにあって、新宿歌舞伎町や六本木のホストクラブより、ちょっと下ながら、個性あふれるオーナーとマネージャー、そしてホストたちで人気のホストクラブ「club indigo」を舞台にした都会の盛り場ミステリーの第3弾である。

前巻までは、「club indigo」の共同オーナーである高原晶がメインキャストとして事件の捜査に潜入したり、謎解きを担当したりといったシチュエーションが多かったのだが、今巻は、「club indigo」のホストたちがそれぞれメインとなって、事件に巻き込まれたり、謎解きをしたり、といった展開になっている。

シリーズが成長していくと、始めは「端役」だったキャストが登場場面を増やしていって、いつの間にかシリーズの最初の方のメインキャストと入れ変わって「主役」級になっていくことがあるのだが、これがその前兆なのかどうかは、今後のシリーズ展開によるんでしょうね。

【収録と注目ポイント】

収録は

「神山グラフィティ」
「ラスカル3」
「シン・アイス」
「ホワイトクロウ」
の四話。

今巻のはじめの「プロローグ」のところで、ホストの「内装をリニューアルしたい」という要望を入れて「club indigo」が改装されることが明らかになる。改装期間は2ヶ月かかるということで、なぎさママの紹介で、明治通りの裏の雑居ビルのレストランのオーナーが奥さんの出産のためしばらく休業するところを借りて臨時営業するのだが、このレストランが「タイ料理店」というところにいろんな隠し味がしかけられているので要注意である。

第一話の「神山グラフィティ」の主人公は、indigoのナンバーワンホストの「ジョン太」。彼は最近、渋谷・神山商店街の「神山食堂」というところで食事を摂ることが多くなっているのだが、その理由は、その店の魚の定食の旨さと、店に勤める「加奈ちゃん」という女の子。

彼女は

すらりとした体を長袖のカットソーとレギンスで包み、半袖ワンピースを重ね着するというガーリーなコーディネートで、上に黒い胸当てエプロンをしめている

という出で立ちで、メイクセラピストを目指しているという、清楚な感じなので、「ジョン太」もホストという職業を隠しているという設定。

事件のほうは、深夜に、この商店街のシャッターやショーケースに黒いペンキでいたずら書きされることが相次いでいて、この犯人をつきとめる話。「ジョン太」が「加奈ちゃん」にいいところを見せようと、ホスト仲間と捜査をすすめるのだが、加奈の意外な秘密がこぼれ出てくるのだが、という展開である。

第二話の「ラスカル3」は、indigo一番の強面ホストのアレックスが主人公。彼はプロのキックボクサーなのだが、所属ジムの社長というのがギャンブル狂で、アブナイ向きに1千万の大借金をしてしまう。

そして、借金のかたにジムの権利を提供するか、地元の顔役との縁を切れ、とジムの社長が監禁されてしまう。アレックスとジム仲間の偽タイ人のポンサックこと内田、ジムのフィットネス会員の一志の三人は、会長を監禁しているアブナイむきが経営するオンラインカジノ店から金を盗み出そうとたくらみ・・・、という展開。

このシリーズの常として、最後のところでアレックスがドジって大立ち回りの後、大団円という展開で、お決まりのストーリーながら「スカッ」としますな。

第三話の「シン・アイス」の主人公は、冷静で、頭の回転のいい「犬マン」が主人公。彼が公園で知り合った、ホームレスの画家・タクミと、タクミがが住む公園のホームレスのまとめやくの殺人疑惑を晴らそうとする話。

殺人事件の被害者は、同じホームレス仲間の藤尾という男で、彼はいい金ヅルを見つけたので、ホームレス生活とはオサラバだ、とほざいていたのだが、公園で刺殺体で発見されたもの。
捜査の過程で、近くの商店街の再開発計画の中で、立ち退きせずに開業しているドラッグストアに聞き込みに行き、そこの女性店主と高校生の一人娘と仲良くなるのだが、実はこのドラッグストアには秘密があって・・・、という展開。

最後のところで、「タクミ」のちゃっかりした行動にあっけにとられてしまいますな。

最終話の「ホワイトクロウ」は、indigoの改装を請け負っている売れっ子インテリアデザイナー・笠倉のアシスタントの白戸仁美という女性が突然姿を消してしまう。彼女はいつも黒づくめの服装をしていて「クロちゃん」と呼ばれていて、ホストたちのアイドル的存在になっている。

彼女の行方を探すうち、彼女と笠倉がデキていることがわかる。さらに、笠倉が手がけた店に彼の作品の証拠として残すカエルのグッズ(ラッキーフロッグ)に夜光塗料で「輪」が描かれていることがわかるのだが、これは何を意味しているのか・・・、という展開。

あらゆる才能は、次の世代によって乗り越えられるのだな、とちょっと当方には苦目の結末。

事件のカギを握るUSBメモリが、タイ料理の新定番・タイスキによって危うい状態に陥りそうになる設定を使いたくて、筆者は、indigoの仮店舗を「タイ料理店」にしたのか、とちょっと邪推する。

【レビュアーから一言】

indigo改装中の、ホストの面々を中心としたストーリー展開ということで、第一弾、第二弾とはちょっと違った味わいな第3弾である。
ただ、今までは、姿格好や腕力は特徴があっても、どこか脇役っぽい感じのあった、「ジョン太」「アレックス」「犬マン」「DJ本気」たちが生き生きとして持ち味を発揮しているのが魅力である。

高原晶のちょっと冷めた活躍とは違った「熱さ」を感じる第3弾でありますね。

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