今こそ「個人ブランディング」を根っこから学び直してみよう ー 本田直之「パーソナル・マーケティング」(ディスカヴァー)

ひところ、個人の「ブランディング」ということは大流行して、自分をどう「売り込む」か、「どこに宣伝するか」といったことが、多くの人にとって「最重要課題」であった頃があって、「ブランディング」を売りにそてタレント的な活動をする人たちを多数デビューさせたり、SNSを流行らせたり、といった現象は記憶に新しいところであろう。

その「ブランディング」の大旋風の素の一つともなったのが、2009年に初刷がでた本書でもあったのだが、熱に浮かされたような「ブランディング」ブームも落ち着いた現在でも、変世の中の変化のスピードの速さは変わるところはなく、個人の「ブランディング」、本書でいう「パーソナル・マーケティング」のノウハウを押さえておくことの重要性は変わっていないと思う。

ただ、その「押さえ方」は、流行にのっかって出ていた数多い「類書」ではなく、「原液」のところを掴んでおくべきなのは言うまでもなく、本書『本田直之「パーソナル・マーケティング」(ディスカヴァー)』は、絶好の「原液」的なものといっていい。

【構成と注目ポイント】

構成は

パーソナル・マーケティングの基本戦略
 法則01 パーソナル・マーケティングがうまくいっている人の共通点
 法則02 パーソナル・マーケティングがうまくいっていない人の共通点
 法則03 パーソナル・マーケティングのポイント
 法則04 パーソナル・マーケティングのフレームワーク
自分の「強み」を洗い直す
 法則05 会社のブランドの頼らない
 法則06 キャリアアップよりもプロフィールアップを目指す
 法則07 プロフィールにストーリー性を持たせる
 法則08 将来の成功イメージから逆算する
 法則09 自分にタグを貼る
 法則10 アンチタグリストをつくる
 法則11 人に話を聞いてもらう
 法則12 転職エージェントに登録する
 法則13 モデルを決め、その人と自分を比較する
 法則14 「人に教えられること」を持っている
 法則15 「強み」は掛け算である
ターゲットを明確にする
 法則16 「誰の役に立つか?」を徹底的に考える
 法則17 うまくやっている人のやり方を分析する
 法則18 「相手はあなたに何を求めているか?」を考える
 法則19 時代のニーズを読み取る
 法則20 まず、狭いマーケットで一番になる
断片的な経験や能力を体系化する
 法則21 成功経験をリストアップする
 法則22 「たまたま」の成功を「何回でもできる」スキルに変える
 法則23 ニーズとマッチさせて「切り口」をつくる
 法則24 ロジカルにまとめる練習をする
他人との差別化をはかる
 法則25 「自分ならでは」の独自性をつくる
 法則26 キャリアをミックスさせる
 法則28 自分のキャッチフレーズをつくる
個人のプロモーション戦略を考える
 法則29 セルフメディアを持つ
 法則30 自分の名前を検索してみる
 法則31 独自の言い回しでクチコミをつくる
 法則32 マスメディアと上手に付き合う
 法則33 メディアキットをつくる
 法則34 本を出版する
個人ブランドをマネジメントする
 法則35 長期ブランディングを目指す
 法則37 ブランド接点をデザインする
 法則38 外見だけ立派にしようとしない
 法則39 状況に合わせてリブランディングする

となっていて、今回は目次を、かなり詳細目にレビューしたので、おおよその骨格はこれだけでも推測がつくところはあるのだが、できれば気になったところを原書を確認しておいたほうがよいのは、「原液」的な書籍を読む場合の「鉄則」であろう。

それは例えば、「法則02 パーソナル・マーケティングがうまくいっていない人の共通点」のところでは、

インプットが少ないと、最初は良かったとしても、アウトプットの質がどんどん下がっていきます。そうなると、周囲の評価も「この人は大丈夫だろうか?」「思ったよりたいしたことないのでは?」ということになってきます。 当たり前のようですが、パーソナル・マーケティングができている人は、たくさんの本を読んでいたり、つねに新しい人に会っていたり、いろいろな所に足を運んでいたりなど、常日頃、じつにたくさんのインプットをしています。

と、「見てくれ」と「売り込み」だけの「ブランディング」の底の浅さを的確に指摘したり、「法則14 「人に教えられること」を持っている」では、

ところで、「強み」とは何でしょうか? 私はひとことで言って、「人に教えられることを持っている」 ことだと考えます。「人に教えられること」とは、イコール「人が詳しく知りたいと思って聞いてくれること」です。あなたが一方的に「話したい」「伝えたい」というだけでなく、それについて誰かが「詳しく知りたい」と興味をもってくれるかどうかがポイントです。

として、「第三者目線」「他人目線」の大事さを教えてくれるのである。

そして「CASE STUDY 4」で音楽プロデューサーの「四角大輔」さんが、音楽プリオデューサー活動のほかに、アウトドアとか釣りを本気でやっていることを取り上げて

「あいつはアウトドア雑誌にしょっちゅう出ている」「年に2回、必ず連休をとってニュージーランドに釣りとトレッキングに行くらしい」などというイメージがつくと、業界内で「独特だ」と話題になります。そうすると自分の存在がアピールできて、仕事につながることもあるそうです。これは本書でいう「差別化」にあたります。
もうひとつは、個人として会社やアーティストと対等でいられることです。
(略)
精神的かつ現実的なセーフティネットが必要です。それがあってはじめて、誰とでも対等のスタンスで仕事ができるし、アーティストとも真の信頼関係を築くことができるわけです。

と彼の行動を分析しつつ

会社に依存している人は、どうしても被害者意識が強くなります。
「会社に言われて仕事をしている」「クライアントのわがままで残業させられている」といった気分に陥りがちです。
しかし、四角さんのように、自分は会社と対等な関係であるという気持ちになると、「私は自分の能力を提供しているんですよ、と考えられるようになります。そうなれば、文句も出ないし、仕事も楽しくなるし、より成果も上がります。

と、実は、この「「パーソナル・マーケティング」や「ブランディング」が、会社員など「勤め人」とも無縁ではないことを明らかにしてくれているのである。

【レビュアーから一言】

「パーソナル・マーケティング」というものは、「創り上げていくもの」であるとともに、時間がきたり「壊すもの」であり、「創り変えるもの」であるようで、このあたりのタイミングを間違えて、「遺物」と成り果ててしまう例は数多い。
その点、

一度うまくいったからといって、そのやり方に固執してはいけません。
私の場合、「レバレッジ」シリーズは 10 冊で終わりにして、そのあとは新しい方向にいこうと最初から決めていました。いつまでも「レバレッジ」と言い続けていたら、だんだん飽きられて価値が下がっていくし、次のステージに移りにくくなると思ったのです。

といったように、筆者の立ち位置は明快で、爽快ですらある。

「セルフ・マーケティング」にチャレンジする人は、こういう潔さを心の底に秘めた上で、果敢なチャレンジが必要なのかもしれませんね。

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