Web情報によると、六本木未来会議のクリエイターインタビューで、水野学さんが提唱した構想に基づき、クリエイティブディレクションを学ぶ学校としてつくられたのが「六本木未来大学」であるそうな。
さらに、本書によるとデザインは「多くの人にとっては、学ぶ機会も殆どなかったのにも関わらず、「当然」わかりますよね」と日々実践を強いられている状態」の中で、「学ぶ機会がないのなら、その機会をつくってしまおう!と、デザインを必要としている全ての人が、デザインを学べる場として立ち上げた」もので、本書は2015年から2018年9月まで行われた講義録の中からセレクトして収録されたものである。
【収録と注目ポイント】
収録されている講義は
「クリエイティディレクションって何ですか?
ー水野学 クリエイティブディレクター」
「伝わるアイデアって何ですか?
ー小西利行 POOL inc.ファウンダー」
「人が動く企画って何ですか?
ー嶋浩一郎 博報堂ケトル代表取締役社長」
「物欲なき世界のクリエイションって何ですか?
ー菅付雅信 グーテンベルグオーケストラ代表取締役」
「ビジネスのデザインって何ですか?
ー夏野剛 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授」
「クリエイティブディレクションに必要な法との付き合い方って何ですか?
ー水野祐 弁護士」
となっていて、デザインやクリエイティブディレクションに知識の深い方々の、多様な視点からの講義が収録されている。初っ端は、水野学さんの講義で始まるのだが、氏の著作はこのブログでもいくつかレビューしているので、ここは、他の人の言説で気を引かれたところをいくつ紹介すると、まず、クリエイティブディレクションの必要性のあたりは、小西利行氏の
クリエイティブディレクションは、普通のビジネスにこそ威力を発揮すると考えてください。(P56)
全ての仕事には絶対に滞りがあります。もう完全に順調ですという仕事は100%ありませんよね。滞りがある以上、そこにブレイクスルーを求めるわけです。それが、どんな堅い仕事であったとしても、ブレイクスルーが全ての仕事に重要なのであれば、そこにはアイデアが必要です。なぜなら、何もしなければブレイクスルーしないから。そのアイデアを発生させるには、既存にはない発想が必要になる。よって、クリエイティブは重要ですよと。ザックリ言うとこういうことなのです。
よく「なんとなく今までの既存の考え方を踏襲していこうというやり方だと、あまり面白いことができない」という言い方をしますが、「面白いこと」とか言うからややこしいのであって、ブレイクスルーができないと考えてください。簡単な話です。「全ての仕事においてブレイクスルーができたほうがいいじゃん。だったらクリエイティブっていう感覚が必要なんだよね」ということです。(P57)
といったあたりが、「デザイン」思考の現在のビジネス現場における必要性を端的に表していて、
クリエイティブの発想という点からは、資料づくりに時間を費やすより、アイデアづくりに時間を費やしたほうがいいわけです。
というところでは、こういう「思考」の導入によって仕事のスタイルが変わってく気配が漂うのだが、これを導入できるかどうかは、企業の度量というか許容度が試されるんだろうな、と当方の経験から感じるところではある。
さらには、嶋浩一郎氏の
どんな仕事でも、広告を見てはしい人、コンテンツを見てはしい人、商品を使ってほしい人、 つまリターダットといわれる人たちがいるはずです。
僕たちはその人たちの欲望に敏感にならなきゃいけないと思うのです。(P102)
ターゲットの欲望を捉えることをマーケティング業界で、「インサイトを捉える」といいます。このインサイトをバカにしちゃいけないと僕は思っているんです。20年以上企画の仕事に携わってきて、確実に言えることは、企画は面白いからワークするわけではないということです。もちろん、ヒットする企画は面白いことが多い。でも、それは必要条件ではありません。本当にヒットする企画は的確にターダットの心の奥底にある欲望を捉えているのです。(P103)
や
企画は面白いからワークするのではなくて、インサイト、つまりターゲットの欲望を捉えているからワークするのです。でも、インサイトを捉えるって実はとても難しい。
なぜなら、人に「あなたはどんなインサイトを持っていますか?」って聞いても、多くの人は答えられない。そう、インサイトは隠された欲望なのです。(P104)
といったところは、「おぅ」と響いてくるのだが、ではその「インサイト」を掴む方法は、本書を読んだ上で実践の場が必要なんであろうな、と思う次第である。
さらには、夏野剛さんの
今、リーダーの役割は、ビジネスのデザインをすることです。過去にこだわっていたらいけない。過去と同じことをやっていたら、何もやっていないのと同じなのです。過去と同じことをやっているリーダーは、20世紀型のリーダーなのです。
日本はここまで、変えないできてしまいました。でも、これはチャンスでもあります。
変えないなら、変えたモデルで勝負すればいい。日本はまだお金があるし、人の教育レベルは高い。技術もあります。あとは人とお金をアウトプットでどれだけ増やせるか、ということを考えるだけです。
といったところは、ITビジネスの最先端を走ってきた人物からの、今の経営層に対する叱咤でもあるのだが、全ての若いビジネスリーダー(若い、っていうのは「年齢」ではないよ)への激励でもあるのでしょうね。
【レビュアーから一言】
気鋭の人物たちの生の「講義録」であるので、今回のレビューは、気になったところをいくつかピックアップしただけで、かっちりとしたレビューにならなかった。
さらにいろんな視点から切り込んだ講義録なので、人それぞれに気になるところは異なってくるのは間違いない。クリエイティブになりたいビジネスマンは一読しておいたほうがよいですよ。
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