関が原は、茶人大名をどう変えていったか ー 山田芳裕「へうげもの 十一服」(講談社文庫)

数寄大名として戦国末期から江戸初期にかけて一世を風靡した「古田織部」を主人公にしたマンガの講談社版の文庫の第11弾。
千利休といった先人の死や、戦乱を乗り越えて、風格を増してきた「織部」なのであるが、関ヶ原という時代の景色を大きく変える事態を迎え、そのスタンスもなにかしら、権力者の望む姿と離れていく姿を描き始めているのが今巻である。

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【収録と注目ポイント】

収録は

第百五十四席 September Rain
第百五十五席 横綱トリッパー
第百五十六席 Flying Sohsho
第百五十七席 グリーンスパイダー
第百五十八席 ぼくたちは失敗
第百五十九席 H jungle with T
第百六十席  星屑の記憶
第百六十一席 千年のごとく
第百六十二席 名物は買わない
第百六十三席 イシダイシダ
第百六十四席 Forget Me not
第百六十五席 アイ・ラブ・ユー、OF
第百六十六席 パラダイス京都
第百六十七席 Samurai,Pottery & Violence
第百六十八席 feels So-AN good
第百六十九席 TOUCH BOYS
第百七十席 North windy lady

となっていて、時代的には、1600年9月14日から1605年6月までの間の物語なので、関ヶ原の戦、徳川家康の征夷大将軍の就任、二代目徳川秀忠が征夷大将軍位を引き継ぐといった、安土桃山時代から、江戸時代へと移っていく時代である。

時代が変わっていく時は、いつも負けた人々に多くのものを残すようで、関ヶ原に乗じて天下をうかがっていた黒田如水が、東軍勝利で徳川の支配が揺るがないと見ると、「良い土」のでる土地の領有して、そこで「良器」を焼いて利を得ることを目論む場面で

戦なき世の武器とは数寄ぞ
多くを見方につけたくばよう心得ておけ

と徳川の時代での「新しい勢力の伸ばし方」を示唆したり。

東北の支配を企んだ伊達政宗が引き続き攻め続けることを選択し

徳川に対抗していくにはよぉ
あのあ大久保長安って野郎も巻き込んで
うなるほどの金銀銅を持つ事だたぁ思わねェか!?

と徳川の時代でなお、天下を狙ったり、西軍についた毛利輝元が

「己が領地を守り天下を望むなかれ」・・・・
元就公よりの家訓に背き、大阪にて指揮まで執ったことが・・・
今度の敗因よ

と、自家の現在の「力」を超えた背伸びの反省をしたりと、様々なこれからの生き方を見せてくれていて、先行きの見えない現代における生き方においても、なにやら示唆的ではありますね。

そして一番示唆的なのは、刑死した石田三成から遺志を託されそうになって、

と激怒するも、織田有楽斎に

と指摘される古田織部の姿が、危険を感じつつも、古き時代を背負わざるを得なくなった「文人大名」の「悲しさ」を見るようでありますね。

【レビュアーから一言】

「へうげもの」の時代観は筆者独特のものがあるのだが、通説が切り捨ててしまった「怪しげな」ところと併せて、「力強さ」も未だ遺しているのは間違いない。
教科書的なものを期待してはいけないが、この時代の持っていた「熱さ」と数寄者大名・古田織部の覚悟のほどの「数寄」にかける熱情を感じ取れますね。

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