桃子の「不思議な現象」の秘密の影には父親の事故死が・・ ー 加藤実秋「モップガール2」(小学館文庫)

前巻で、主人公の桃子がちょっと気になっている、同僚でイケメンの「翔」の父親に関する事件が解決したのだが、その当人が会社を去って、代わりに中国人研修生の「王」さんが「クリーニングサービス宝船」に入社して、今巻が始まる。
今回、桃子におきる現象は、掌をもぞもぞしたり、遠吠えや尻尾振りのような犬が憑いたような現象だとか、前巻よりパワーアップした怪しげなものになっているのが特徴である。

【収録と注目ポイント】

収録は

「嗤う掌」
「青い欠片」
「ファミリーテイル」
「ブラッドライン」

の四話。

まず第一話の「嗤う掌」で桃子が見舞われる現象は、掌をもぞもぞと小さい何かが這いずり回る感触である。この原因となったのは、オープンカフェの前で飛び出してきた男がはねられた交通事故。幸いに、この被害者の命に別状はなかったのだが、この事故に記憶をなくそてしまっている。この記憶を取り戻させないと、桃子の「症状」は収まらないのだが・・、という展開。ちょっとネタバレすると、この「もぞもぞ」っていうのが、掌に文字を書くときの感触なのだが、何が書かれるのか、は原署で確認を。

この症状のせいで、ちょっと危険な方々が経営している「企画会社」の社長が大事にしている「宝石箱」を落として壊してしまうトラブルを起こしてしまうのだが、案の定この品はまがい物であるので、なんとか助かるのがおまけですね。

第二話の「青い欠片」の事件は、キャバクラの売れっ子が殺害される事件。今話では、被害者と、何かとつっかかってくる「ケバい」同僚の「未樹」が揉めていることを示すメールが被害者の携帯に残っていたため、未樹が容疑者として逮捕されてしまう。なんとか、未樹を助けたいと自主捜査に乗り出す「桃子」に訪れた現象は「焼きそば味のものが無性に食いたくなる」というもの。
前話で奇妙な味を出していた中国人研修生の「王」さんが関西へ研修先を変えるのを待っていたかのように「大友翔」が復帰してくるので、桃ちゃんも安心して動いてますね。謎解きのほうは、仲良く見えるが、男女関係になると話は別、といったところか。

第三話の「ファミリーテイル」は、杉並区の外れにある「波型の洋瓦の屋根に、レンガをアクセントに使った漆喰の外壁という、流行りのデザインの二階家」で、桃子が現象にみまわれる。ただ、今回は障害や殺人事件、あるいは事故現場でおきたわけではなく、この家の手づくりの「ウッドデッキ」で「犬つき」になってしまうというもので、なぜこの場所で現象がおきるのか全くわからない。どうやら、謎解きのカギは、以前、この家の隣に住んでいて、この土地を所有者で、今は犬のブリーダー兼トレーナーをしている女性のありそうなのだが・・・、という展開である。ねっからの愛犬家と愛犬のつながりが泣かせる話ですね。

第四話の「ブラッドライン」は、桃子の事故死した父親の「死」の真相が明らかになる話。今回の現象は、前巻の最後のほうで、実家に帰ったときに起きた「鼻歌が聞こえる」というもの。今回の話で、桃子と翔の幼い時から知り合いだった話や、桃子の幼馴染の会社が実は父親の死に深く関わっていたり、と隠されていたものがボロボロとでてくるのだが、一番は、桃子の事故現場で見舞われる「現象」の秘密がわかるところですね。
まあ、詳しくは原署で。

【レビュアーから一言】

桃子の「現象」はどんどん奇妙になってきているのだが、それに慣れてきているのが怖いところ。
さらに、この現象が起きるのも殺人とか事故とかがあった時ばかりでなく、何か強い「想い」や「念」がある場所では起きるようになってしまうようになり、これはミステリーではなくて、違う系統の話か?ってな感じなのだが、ちゃんとミステリーしてますのでご安心を。

特殊清掃の掃除会社に、霊感的特殊能力の女の子が就職すると・・ ー 加藤実秋「モップガール」(小学館文庫)

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