女性白バイ警官は、明るく、元気に、「謎」を解く ー 佐藤青南「白バイガール」(実業之日本社)

佐藤青南が紡ぎ出してくる物語の女性主人公は、「行動捜査官」シリーズの「楯岡絵麻」や「消防女子」シリーズの「高柳蘭」といった、男勝りではあるが、健気で魅力的な主人公が多いのだが、彼女たちに続いて、またも魅力的な女性主人公を世の中に送り出してくれた。
しかも、二人もである。

今巻は、島根県出身・ぽっちゃり系の「本田木乃美」とツンデレ系のバイク娘「川崎潤」の二人の白バイの女性隊員の青春奮闘物語である。

 

【あらすじと注目ポイント】

白バイの女性ポリスというと、箱根駅伝の伴走などでTVでもよく見るのだが、ネットで調べてみると、警視庁の交通機動隊の白バイに女性が始めて配属されたのは2010年であるらしく(警視庁交通機動隊に初の白バイ女性隊員(日テレNEWS24、2010.09.08))、そんなに古い話ではない。
今巻は、そんな警視庁ではなくて神奈川県警の交通機動隊が舞台に展開される物語である。

で、話のほうは、新米白バイ警官の「本田木乃美」が、半泣きになりながら8トントラックの運転手に交通違反切符を切るところからスタートする。なにせ、タレ気味の大きな目でまんまるの顔。さらに中学で身長の伸びが泊まったのだが横幅はある「ぽっちゃり体型」とあって、残念ながら強面系ではなく、違反運転手からなめられてばかりである。もっとも、彼女は人並みはずれた「動体視力」の持ち主というおまけ付きではある。

 

かたや、もうひとりの主人公「川崎潤」は長身で、違反ドライバーをとことん追いかけるタイプの凄腕で、エンジン音を聞くだけで、車種と、おおよその速度までも言い当てる特技の持ち主である。
 
当然、この二人の気質が合うわけもなく、というより、人なつっこい「本田木乃美」に対して、「川崎潤」のほうが一方的に敵意を燃やしているのだが、潤が、高校を中退してガソリンスタンドでアルバイトしている「滝川まどか」という女の子の暴走行為を取り締まっているうちに、事故死させてしまう出来事をきっかけに、良いコンビとなっていく、という筋立て。
ただ、本巻はあくまでもミステリーであるので、「まどか」の暴走行為の時、なにかの薬物による異常状態を見せていたのだが、検査の結果をシロ。ところが「木乃美」が調べていくうちに、検査に出ない「薬物」を売っている男の噂を耳にする。さらには、その男は、昔凶悪なことで知られたが、今は解散しているはずの「横浜狂走連合」のメンバーであると言っていて・・、といった展開で、「木乃美」「潤」二人だけでなく、同期の刑事「坂巻」や交通機動隊のメンバーを巻き込んだ捜査活動になっていくのである。
 
お決まりのアクション場面は、この事件の容疑者として浮かび上がった「タカシ」という人物が「フェラーリ」で逃走を図るところを「潤」が追いかけるところなのだが、少々ネタバレエすると、この逃走で捕まえた「タカシ」を取り調べていくうちに、物語の途中で出てくる、「木乃美」の淡い恋物語が破綻するとともに、坂巻が捜査している、外国人の犯行らしい「強盗事件」の謎も解けるのだが、詳細は原書で確認してくださいな。
 

【レビュアーから一言】

 
元気のいい、二人の若い女性白バイポリスの活躍、ということで物語自体が弾むように展開していく。なによりも、この二人、それぞれに悩みを抱えるのだが、めげずに前へ向かっていくのがいいですよね〜。
木乃美が白バイ警官になった理由「箱根駅伝の伴走」がテーマとなる巻も用意されているので、期待して読め、でありますね。
 

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