織部は「豊徳合体」を目指すも、時代は違う方向へ進んでいるようで・・・ – 山田芳裕「へうげもの 19」(モーニングKC)

前巻では、浮気をしたことが御台所のお江との仲を修復するため、織部のアドバイスをうけるがうまくいかなった秀忠と、加藤清正の切腹による説得に豊臣秀頼との面談を承知した家康と、徳川勢は、豊臣シンパの大名たちにちょっと押し負けた感じであったのだが、今巻ではそれを跳ね除けて「天下取り」へと進むために、徳川方が、着々と障害物を片付けいてく展開となっている。

描かれるのは1611年1月から1612年8月までで、大坂冬の陣のほぼ2年前。1612年4月には、江戸、京都、駿府などの徳川幕府の直轄地に対してキリスト教の教会の破壊と布教の禁止を定めた禁教令が布告され、1612年5月には、最後のキリシタン大名・有馬晴信が切腹を命じられるなど、豊臣秀吉の時代のきらびやかさは姿を消そうとしていますね。

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【構成と注目ポイント】

構成は


第百九十八話 KONJIKI YAKSA

第百九十九話 Baet And The Beast

第二百話 若者が全て

第二百一話 We need you baby

第二百二話 狂える春

第二百三話 Mi Loveつちゅね

第二百四話 Say,IEYASU

第二百五話 ハードコアの魂

第二百六話 左様然らば左様なら

第二百七話 CHIGIRI

第二百八話 大久保WORLD


となっていて、徳川方の巻き返しは、徳川秀忠が伊達政宗に政宗の抱える傾奇者が江戸の風紀を乱すのをなんとかしろ、牽制球を投げるところから始まる。まあ、「へうげもの」シリーズでは秀忠という人はクソ真面目で、浮ついたことが大嫌いってな感じで描かれているので、伊達政宗と気が合うわけはないのだが、伊達のほうも、「出雲の阿国」を追放せざるを得なくなるあたりは、徳川の力がより強くなっている現れであろう。そんな時に、織部のほうは聚楽第の継ぐ屋敷としして、彼のデザインを細部までいれた「ひょうげた」ものを建てているのだが、ここらは後々、家康や秀忠の癇に障るのでないか、と心配にはなってくる。


そして、秀忠だけでなく、家康のほうも、「淀君」に面会したときに家康と祝言をあげることを検討してくれ、と誘いをかけたり、上皇の前で


と、自らの力を誇示するのだが、こうなると、こんなふうに立派に育った「秀頼」は邪魔でしかなかったでしょうな。

たしか、司馬遼太郎さんもたしか「城塞」で、大柄で美丈夫に成長した秀頼と面談した家康が警戒心をもったのが大坂冬・夏の陣につながったといったことを書いていたような気がいたします。


後半の方では、加藤清正が家康が派遣した刺客に襲われたり、福島正則の病状が悪化したり、大久保長安が風呂で倒れたり、と徳川と豊臣の合体を目論む織部のパートナーたちが次々と欠けていって、時代の流れは止めようもなく大坂冬の陣へとつながっていくだが、そのあたりは次巻以降で。


微笑ましいのは、秀忠が家康の持っている媚薬をくすねてまでして、お江に迫って、なんとか相手にしてもらえることとなるあたりは、クソ真面目なお殿様に「お祝い」を言っておきましょうか。


【レビュアーから一言】

「戦」の兆しはますます高まっていくのだが、気になるのは織部たちがつくりあげた「ひょうげた」美意識がどうなっていくのかということであろう。織部の弟子的な位置づけの上田宗箇あたりもいるのだが、ここはやはり、小堀作助に期待をしたいところ。彼自体は、徳川の儒学者。林道春から幕府のための新しい窯場を起こせ、と徳川風の茶の湯(茶道)づくりを命じられ始めているで制約も多いのだが、豊徳合体がならなかった場合、

と作助に迫る織部に対し、「示現流で痛うないように(首を刎ねてあげます)」と答えるあたりは、薩摩で一層大きく成長したようであります。


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