「潤」のバイク初心者当時の「古傷」は事件解決の鍵となるか? ー 佐藤青南「白バイガール 幽霊ライダーを追え」(実業之日本社文庫)

タレ目のぽっちゃりの癒やし系キャラの「本田木乃美」と、ライダーテクニック抜群ながら、ツンデレ系の「川崎潤」という性格も体型も全く違う女性白バイ警官二人をメインキャストにする「お仕事」系ミステリー「白バイガール」の第2弾である。

今巻は、「潤」に一目惚れしてしまって「おっかけ」をするイケメン・タレントも登場してきたり、全国白バイ安全運転競技大会へ「潤」が女性枠の優勝者の辞退によって急遽出場しないかと打診される、といった「木乃美」の箱根駅伝先導という長年の夢にも関連することも持ち上がりつつ展開するのが本巻である。

【あらすじと注目ポイント】

まずはイケメン・タレント・成瀬博己のスピード違反を「潤」がとっ捕まえるところからスタートして、このタレントがマネージャーに罪を着せようとしたり、とにかくいけ好かない態度の連続であるのだが、これは今巻の中ほどからの彼の活躍を際立たせる前振りと、このマネージャーを印象づける筆者の陽動なので、読者はひっかからないように注意してくださいな。

話の本筋のほうは、県内で風俗店相手に営業している行政書士の刺殺事件が発端。事件は、夜遅くに「赤レンガ倉庫」でおきたもので、被害者は妻には「取引先の接待がある」と嘘をついてでかけていて、事件の手がかりはほとんどない。唯一に近い手がかりは現場の近くに落ちていたバイクのお守りの「ガーディアン・ベル」という設定で、県警の捜査一課の「坂巻」刑事が、知り合いの木乃美のいる交通機動隊に聞き合わせてきた、という次第。

その「ベル」の持ち主が、以前プロレーサーで、飲酒事故でレーサー生命を絶たれた「望月」のものではないか、と気づいた「潤」は彼の行方を仲間には内緒で調べ始める。「望月」は「潤」がバイクを始めた頃の「憧れの存在」。どうやら、「望月」の検挙には、潤がなにやら絡んでいるようで・・・、というのが一つ目の謎解き

ちなみに「赤レンガ倉庫」というのは

赤レンガ倉庫は、明治末期から大正初期に国の模範倉庫として建設されたレンガ造りの歴史的建造物です。創建当時から横浜港の物流拠点として活躍してきましたが、新港ふ頭が物流機能を他のふ頭に譲っていく中、赤レンガ倉庫も倉庫として利用されなくなり、地区のシンボルとして静かに佇んでいました。横浜市では、『ハマの赤レンガ』と呼ばれ多くの市民に親しまれてきたこの赤レンガ倉庫を、貴重な歴史的資産として保存し、また市民の身近な賑わい施設として活用するため、平成4年3月に国から取得しました。

ということで、取得後、横浜市が再整備して有名観光スポット化してますね(横浜市 赤レンガ倉庫HP

もう一つは、同じ頃、管内で黒いバイク、黒いヘルメット、黒いレーシングスーツで「RS250」に乗ってスピード違反を繰り返す「ライダー」が出現する。このバイク乗りは、白バイ隊員の追跡の手をかいくぐって捕まらないほどの高度なテクニックの持ち主なのだが、このバイクの所有者は現在怪我をしいていてバイクに乗れない上に、バイク自体も誇りをかぶっていて最近動いていないのが明白な状況。このバイクは一体・・・、というのがもう一つの謎解き。

2つの事件のキーとなる人物は、元プロレーサーの「望月」なのだが、殺人事件の遺留品の「ガーディアン・ベル」が望月が彼の娘・涼子へ贈ったものであること、そして、涼子は、最近までバイクを買う資金を貯めるため、「パパ活」と称して「出会い系」のバイトをしていたのだが、その「出会い系サイト」は売春を斡旋していた疑いもある。さらには、その出会い系を主宰していると思われていた女子高生が、実は偽造アカウントで、その正体は・・、とヤバイ方向へと展開していくのだが、ここから先は原書で確認願います。

ちょっとネタバレすると、実の父親にしろ、義理の父親にしろ、やはり父親にとって「娘」は特別なものだよね、というところでしょうか。

最後のほう、木乃美の説得に応じて、全国大会に出場する「潤」の姿が凛々しくて、次作以降の展開が楽しみですな。

【レビュアーから一言】

時代だねー、と感じさせるのが、この幽霊ライダーの情報集めに使われるのが「SNS」による情報収集。一般人のSNSであれば、フォロワー数も限られているし、範囲も限定的なのだが、「潤」が利用したのは、自分に惚れてデートして欲しがっている、イケメン・タレントの成瀬や彼の友人で同じく人気タレントの丸山淳也のアカウントを使って、情報提供や目撃情報を呼びかけるのであるから逃げようはないよね、というところである。まあ、有名タレントを手球にとる「潤」ちゃんも大したもんではありますが・・・。

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