竹姫代参に始まる、天英院と伊賀者の連続の襲撃を、聡四郎どうかわす ー 上田秀人「御広敷用人 大奥記録 5 血の扇」(光文社文庫)

徳川吉宗と竹姫(2019年3月にフジテレビ系列で放映された「大奥 最終章」で浜辺美波ちゃんが熱演したキャラ)の悲恋物語と吉宗に大奥を取り仕切る御広敷用人に任命された水城聡四郎の活躍を描く、江戸中期を舞台にした上田秀人ワールド満載の時代小説の第5弾。

 

前巻で、大奥での御広敷用人襲撃の罰として謹慎を命じられた竹姫が、天英院たちに勧められて、深川八幡宮へ代参することになったのだが、当然、無事にすむはずもなく、刺客の襲撃と、刺客が失敗しても、その対応に時間がかかれば門限に間に合わなくなるとるという二重の罠か仕掛けられる。聡四郎は、伊賀や館林松平の刺客たちから竹姫を守れるか?、さらには竹姫と共に参詣をして護衛をすることになった紅の働きは・・・、というのが今巻。

 

もちろん、聡四郎を取り巻く「陰謀」「襲撃」はこれにとどまるわけがなく、今回のアクションシーンは、深川八幡宮境内、江戸城内、聡四郎の旗本屋敷と舞台を変えながら激しい争闘が続いていくので、時代劇アクションの連続が楽しめる展開になっている。

 

血の扇~御広敷用人 大奥記録(五)~ (光文社文庫)
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【構成と注目ポイント】

 

構成は

 

第一章 女駕籠第
二章 退き口の忍
第三章 長袖の謀略
第四章 師の援(たすけ)
第五章 伊賀のあがき

 

となっていて、まずは、吉宗の長寿祈願で、深川八幡宮に代参にでかけた「竹姫」一行が刺客に襲撃されるところから、スタート。この刺客を雇ったのは館林松平家の江戸家老なのだが、本当の依頼者は天英院で、この巻あたりから彼女が吉宗の因縁の仇敵になってくる。ただ、大奥で御広敷番を襲った事件のとばっちりで謹慎の罰を受けた「竹姫」への大奥のイジメに乗じて竹姫を害そうと企んだものなので、わざと竹姫に軽い罰を与えて、いろんなものを誘い出そうとする吉宗の謀略のほうが一枚上手であった、ということかもしれない。

 

竹姫襲撃事件のほうは、聡四郎と玄馬の活躍で館林松平家の雇った無頼のものはあっという間に撃退。ついでのその騒ぎに乗じた伊賀者も始末される。ただ、一番功績のあったのは聡四郎の妻「紅」。無頼漢たちが竹姫を襲撃する騒ぎが一段落したところにつけこんで、竹姫を襲おうとした伊賀の女忍の攻撃を捨て身で防ぐのでありました、という大功績。もっとも、その内容は、女忍に人質にされたことを良しとせず、自ら女忍の刃に刺されようとするのだから、この人の気の強さも相当なものである。

 

中程のところでは、天英院の実家の父親・近衛基熈が、朝廷における失地回復のために、紀州徳川家に脅しをかけていくのだが、そのネタが吉宗の実母が隠れキリシタンで、それが吉宗の実父が吉宗を表に出したがらなかった理由では、という説は真偽は別にして面白いですね。このあたりのやりとりで注目すべきは、吉宗の跡を継いだ宗直と附家老の安藤帯刀の将軍位に対する生臭さと才能のなさで、意気込みは認めても、シリーズを左右するほどの活躍は無理ですな。近衛と紀州の京屋敷用人・久能のやりとりに口を挟みすぎて自滅する若い侍については、上昇意欲の強い若者の張り切りすぎと許せるかどうかは、それぞれの判断ですね。

 

この「竹姫」襲撃で一番損をしたのは、御広敷伊賀者で、吉宗によって御広敷の勢力を分散されてしまう。さらには、御広敷伊賀者の棟梁・藤川が、この仕打ちに怒った老齢の伊賀者二人が吉宗の生命を狙うのを抑えなかったのがダメ押しですな。この藤川という頭領は、聡四郎が自分たちの隠し財源を暴こうとして役についたと誤解して襲わせたり、館林松平家の味方してみたり、とどうも先を見通す力が弱いですね。シリーズの後半のほうで、江戸の闇を仕切る立場に食指を伸ばすのだが、そうなると闇の勢力がかえって窮地に陥ることになるかもしれんね、と思った次第である。

 

さらに、竹姫を襲った女忍の一人・袖が生き残って、聡四郎の屋敷で治療されるのだが、これは、このシリーズのこれからの展開に大きな影響を及ぼしてくる。身内の伊賀者の吉宗襲撃の失点を回復しようと、聡四郎の屋敷を襲って「袖」を殺そうとしたのが、さらに墓穴を掘ることになっていくのだが・・・、といったところで次巻へ続く。今巻のところでは、江戸城内での吉宗襲撃と、聡四郎の屋敷での「袖」襲撃のアクションを楽しんでくださいな。

 

【レビュアーから一言】

 

権力を巡っての女性の争いというのは、結構厳しいのね、という印象を與えるのが、今巻から本格化する天英院の吉宗憎しの行動で、それに、家柄も何も「下」に見ていた竹姫が成り上がっていくのが、火に油を注ぐ状態になっているのは間違いない。

 

ただ、天英院に味方する勢力と吉宗に味方する勢力との力と勢いの違いが如実に出てくるのも本巻からで、味方はちゃんと選ばないとね、とビジネス書まがいの教訓を与えてくれますね

 

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