”日本型”や”シリコンバレー流”にとらわれない「働き方」を模索する ー ピョートル・F・グジバチ「Google流 疲れない働き方」(SB Creative)

「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか」で、「今、その場で仕事を終らせる」「無駄に悩まない」「メールに頼りすぎない」などのGoogle流の「世界一速く仕事をする」仕事術について紹介してくれた筆者が、今度は「働き方」について書いたのが本書。本書のキーワードは「疲れない」という言葉で冒頭のところで

皆さんは、ヘトヘトに疲れるまで働いているのに成果が出ないと思っているかもしれませんが、逆です。 「疲れている」から、成果が出ないのです。

と「時間」の量を基準にする我々の「働き方」「成果」について疑問を投げかけるのだが、精神論に流れていかないのが高ポイントな「働き方改革)本。

自らのマネジメントや心理的な手法などの誰もがとっかかれそうな「テクニカル」なノウハウも含めてアドバイスしてくれるのが、誰もが仕えるサービスを提供するGoogle流の肝であると実感するのが本書である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章 皆さん、疲れすぎていませんか?
第1章 時間のマネジメントから、「集中力」のマネジメントへ
−フローに入れる環境をつくる
第2章 疲れず生産性を上げる「エネルギー」と「感情」のマネジメント
ースプリントでメリハリをつけた仕事をする
第3章 確実に自分をチャージする食事・睡眠・運動の習慣
第4章 疲れる組織と疲れない組織
ー心理的安全性が不安を取り除く
第5章 疲れない働き方
ー意義を見つける

となっていて、まず注目すべきは高い生産性や高いアウトプットを出すためには自分の集中力やエネルギーの「マネジメントが大事」としていること。ともすると、こうした「働き方」改革本は、長時間労働や会議・協議の生産性の低さといったことについて、「日本型」の欠点を指摘するのだが、その改善手法が彼らの批判する「日本的な精神論」の方向にいってしまうことが多い。ところが、本書では、高いアウトプットを出すための手法として「フローに入る」ということを提案しているところでも、個人がフローに入るための要件として

1 明確な目標
「今、何に取り組んでいるのか」「何のために取り組んでいるのか」を具体的に自覚する
2 リアルタイムのフィードバック
明確な目標に対し「どうしたらそれをもっとうまくできる
3 難易度と能力のちょうどよいバランス
タスクの難易度を、ひるむほどではないが「少し手を伸ばせば届く」程度に調節
4 大きな影響力のある課題設定
ハイリスク・ハイリターンな挑戦を設定
5 ワクワクする環境
「新規性」「予測不可能性」「複雑性」の3要素が高い環境を
6 全身が没入できる環境
全身を動かして五感をフルに活用しながら、タスクに取り組める機会を
7 パターンに気づき、パターンを壊す

といった「フロー」の概念の提唱者であるスティーブン・コトラーの言葉を解説しながら具体のアドバイスしてくれるのが高ポイントですね。
本書によるとフローに入るための要件は17もあるそうなのだが、個人の心理的な要件を整えていけば全部が整えられなくても、自分がすきではないと思っている課題や作業でも「フロー状態」をつくることができるようなので、ぜひともお試しあれ。

また、疲れる組織と疲れない組織」のところでは、疲れる組織の特徴は「忖度が多い」「本音を言わない」「役割も期待されていることも曖昧」などで一方、疲れない組織の特徴は「「わからないこと」はわからないと言える」「本音が言える」「役割と期待が明確」といった分析比較が続くので、ああこの本もお決まりのアメリカ型組織礼賛か・・・と思いきや

社内活性化のためにと外部の講師を迎えて「チームビルディング」などといった高額な研修を行う会社も多いですが、それよりもまずは、仲間と一緒に飲む機会をつくるほうが安価なうえ、効果的です

としたり、シリコンバレーの先端企業で取り入れられ、今流行の「マインドフルネス」 についても、

こうした(シリコンバレー流の)マインドフルネスのあり方が間違っているというわけではありません。でも、それでは不十分なのです。

何が不足しているのか。

それは「他者」との関係性 です。
いわゆるマインドフルネスでは自分がどう感じているのかを重視しますが、他者とどう接していくのかについてはそれほど重視されていません。

といった風に「東洋」の流儀についてもきちんと評価して取り入れてくるあたりは、これが「グローバル」な考え方なのね、と思うのである。

このほか、「食事や睡眠のコントロール」や「お荷物と感じる上司への対処法」、「職場の疲れるコミュニケーションに巻き込まれない手法」など数々の「使える」ノウハウがアドバイスされているので、詳細は原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

本書によると現在は「ナレッジエコノミーからクリエイティブエコノミーへの移行期」にあたるそうで、

クリエイティブエコノミー時代の働き方は、製造業より、むしろかつての農業に近いかもしれません。ただそ、重要なのは天気ではなく、自分のエネルギー。
自分のエネルギーを上手に高めることで、より高い付加価値を生み出すことが求められています。

とのこと。筆者の会社の3つの理念、「遊ぶように働く」「前例をつくる」「予期せぬ事を提供する」を参考にしながら、新しい時代の、自分なりの「新しい働き方」をここらで模索してみてはいかがでありましょうか。

Google流 疲れない働き方
Google流 疲れない働き方

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