バードの旅は山形を北上し、伝統の技と儀式に出会う ー 佐々大河「ふしぎの国のバード 6」

山形でマリーズからバードの脊椎の持病のことを教えられ、さらに盲目のイタコから彼女に同行すると「目の前で人がおっ死ぬことのなるず。」と告げられ、その後、(山形の)金山でも漢方医から蝦夷行きを止めるよう警告され、二人で北海道まで旅をしていくことに暗雲が漂う。そんな中、羽州街道を北上し、今は米沢市に編入されている「六郷村」へと進んでいくイザベラ・バードと通訳の伊藤の旅行記が描かれるのが、「ふしぎの国のバードシリーズ」の第6弾となる本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第25話 院内
第26話 湯沢
第27話 十文字
第28話 六郷①
第29話 六郷②

となっていて、イタコや漢方医の不吉な警告もあるのだが、マリーズの脅しともとれる忠告のため、バードへの随行を悩み、体調を崩していくところからスタート。

寝不足のため、山中で負傷したため行程が遅れ、「院内」で宿泊したことで

といった「脚気」の治療法を探している西洋医学と東洋医学の両方を学んでいる医師に出会うのだが、彼が湯沢で伊藤に向かっていうことばが、バードと同行する後押しになりますね。

もっとも、その発言を引き出したのは湯沢で火事にあった庶民が、しょげることなく家を再建していく姿を見て

とバードがつぶやく「日本文化」の特徴というものに触発されたのかもしれないですね。

それをさらに強調するのが、六郷で出会う死んだ夫の葬式を出す女性を手助けするところで、

と悲しいはずなのに、笑ってバードに接する女性を不審がるバードに

と「伊藤」が解説するシーンがあるのだが、バードが気付け薬として飲ませる「ブランデー」を飲んで

というところを皮切りに夫との想いが吐露して、女性が号泣し始める。ここらは、身分制度の圧力は強くとも、好きあった夫婦の情愛というのは、万国共通のような気がして安心しますね。

巻の最後のシーンで、伊藤がバードに帰国を促す場面があって、バードが今回日本を旅しなければならないわけを告白するのだが、詳細は、原書で確認してください。

ついでながら、この「六郷」の章では、明治時代の信越地方の葬儀の様子が紹介されていて、もちろん当時葬儀社とかはないから「村葬儀」なのだが、

という「葦」につくった仮門をくぐって出棺し、仮門は棺がでたらすぐ出て棺と一緒に埋めて死者が帰ってこれなくするしきたりとか

墓場では、棺と一緒にぐるぐぐる歩き回って、死者の方角をわからなくする、とか今では失われたであろう風習が興味深いですね。

【レビュアーから一言】

真ん中あたりの章の「十文字」では、バードが「紙漉き」にであうところがあるのだが、日本の紙の原料が「楮」であることはご存知の方が多いと思うのだが、西洋の場合は「古布を発行させてすり潰したり、砕いた木材を使う」というのはちょっと当方の知らないところでありました。

さらに、紙漉きの老女が、「紙漉きの一番の楽しみはなにか」とバードに教えるシーンがあるのだが、

といった風に、紙漉きの孫娘と二人で、誇らしげな顔をしているのが印象的。「紙漉きの楽しみ」の答えは、原書でのお楽しみ。

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