明石で開眼した道真は、反藤原の旗手「伴善雄」と出会う ー 灰原薬「応天の門 4」(バンチコミックス)

宮中の支配者として着々と礎を固めつつある、藤原北家の藤原良房・基経親子に対し、反・藤原の旗手として。これまた着々とその意思を固めつつある、在原業平と菅原道真なのだが、業平は検非違使の少将、業平は文章生ということで、まだまだ藤原北家が怖れる存在にはなり切れていないのが現状である。

そんな二人が打倒・藤原北家の最右翼となっていくにかかせない人物と出会っていくのが今巻。

【収録と注目ポイント】

収録は

第十六話 在原業平、数多の災難に遭う事 二
第十七話 在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事
第十八話 京に妖の夜行する事 一
第十九話 京に妖の夜行する事 二
第二十話 山科宮、山中の笛の音に惑わされる事
第二十一話 伴善男、吉夢を引き替ふる事

となっていて、まずは業平の不吉な夢から始まった、業平の身におきた怪異の謎解き。この話は前巻から続いていて、業平に起きた、スズメバチ襲撃、牛車の車に絡んだ女の髪の毛、池への転落といった変異がおきた種あかし。

この謎を解くきっかけとなるのが、道真の許嫁・宣来子のこんな発言で、

なかなか侮れない「女子」でありますな。
で、この事件のキーとなるのが、以前、業平が通っていたこの女性なのだが

結末は、平安時代の男女の浮気っぽさが巻き起こした事件でありますね。

第十七話の「在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事」では、業平が京都の邸宅で海水を浸した藁を焼いてつくる「塩焼き」を行うのだが、その宴席に業平が招かれての出来事。その宴に招かれたのは、反・藤原の一派なのだが、初戦は貴族の集まり。下々のことなど全然気にかけない面々に道真が発する

というのが印象的。道真は「明石」で開眼したっぽいですね。

第十八話・第十九話の「京に妖の夜行する事」は京の夜に出没する「百鬼夜行」の話。「風のない夜に、大路を異形の怪の集団が通り、それを見てしまうと魂がとられる」という噂で、死者もでているのだが、そんな噂に窓わされじ、道真が謎を解き明かす話なのだが、陰に藤原基経の陰謀があって、この「夜行」が運んでくるものが後日の殺人未遂のタネとなるので、覚えておいてくださいね。
ちなみに、この話から、業平・道真コンビの敵となるのか味方になるのかわからない、これまた藤原北家一門の出身で、基経のライバル。藤原常行が登場します。

第二十話の「山科宮、山中の笛の音に惑わされる事」は、道真の書庫番をしている「白梅」の玉虫姫のところでの元同僚・皐月が仕える山科宮に関する話。山科宮は、政争に巻き込まれるのを嫌って隠棲している。その彼が、山中に響く「笛の音」を聴き、

とそれに呼応するように琵琶をひくのだが、その笛の音は山科宮以外にには誰も聴こえない、という謎を道真が解いていくのであった、という筋立て。

第二十一話の「伴善男、吉夢を引き替ふる事」は、藤原北家と反・藤原が大激突した「応天門の変」のメインキャスト・伴善雄が登場。彼の出世のもとは、佐渡赴任中に、

と、地元の娘と夢交換をしたことがきっかけということなのだが、今になって、災害で死んだその娘が「夢を返してくれ」と夢見にでる、という話。
この夢がもとで気力を失いつつある善雄を、道真が「夢」の謎を解いて、

といった風に伴善雄を打倒・藤原北家に向けてパワーを再注入する展開である。

【レビュアーから一言】

打倒・藤原北家に向けた、キャストがだんだんと揃いつつある第四巻。ただ、大江公幹、伴中庸、源融、藤原式家の藤原良近、藤原南家の藤原有貞と数は多いのだが、まともに戦えそうなのは伴善雄ぐらいという結構脆弱な陣営である。
それに対して、藤原良房・基経親子はたった二人でも、協力な「ラスボス」感が溢れていていますな。業平・道真コンビがどう戦っていくか、史実は史実としてこれからが見ものでありますね。

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