AI時代の生き残りには雑談力が必須 ー 茂木健一郎「最高の雑談力 結果を出している人の脳の使い方」

「雑談」がビジネスを円滑に進めていくための強力な武器となることは、これまでいくつかのブックレビューで言ってきたことなのだが、脳科学者の目線で「雑談」をとらえたのが本書である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章 AI時代に身につけるべきもの
第1章 仕事ができる人は雑談がうまい
第2章 あなたが知らない雑談のメリット
第3章 脳科学から雑談を分析する
第4章 こんな雑談はやめよう
第5章 雑談力を身につける
第6章 ビジネスに活かす雑談力

となっていて、まず目を引いたのが

結論から言うと、人間はもはやAIに 太刀打ちできないが、まだまだ追随を許さない、ある1つのジャンルがあります。 (略)その答えが、「雑談」です。

というところで、筆者によると「 雑談力を磨いていくことが、AIが本格的に普及する世界にあって人間が生き残っていくためのカギになること」であるそうなので、これからの世の中、知識を詰め込むよりも、雑談の「技」を身に着けたほうが役に立ちそうな気配である。

このあたりは、とかく雑談を悪しきものとして、職場で注意している管理職も気を付け
ておかないといけないところで

「雑談はムダだ」などと言う人こそ、仕事ができないことを自ら白状しているようなものです。
重ねて言いますが、 雑談そのものがムダなのではありません。それを楽しんだり活かしたりすることができないから、「ムダだ」と感じてしまうだけ

ということらしいので、部下の雑談に「イラッ」ときている管理職の方は、職場管理の際は十分気を付けたほうがよいですね。

ただ、では全く気ままにすればいいのかというと、そうでもなくて

いい情報を仕入れるためには、こちらが相手の役に立ちそうなことを提供する。そのためには、 自分自身も情報をストックしておく 必要があります

であったり、

それなのになぜ雑談が苦手になってしまうのかと言うと、「人見知り」「自己肯定感が低い」「ムダな話が嫌い」だけではかたづけられません。もっと根本的な原因があります。  それが何かと言うと、「アドリブに弱い」 ことです

ということであるので、雑談力を鍛えようと思えば、それ相応の努力はしないといけないのは、心に留めておいてくださいね。
もっとも単純に突き放して終わり、というのではないのが本書の良心的なところで、いい雑談をするための方法は6つあって

①最初に名刺交換しない
②質問する
③相手の話をまとめる
④カミングアウトをする
⑤さりげなくホメる
⑥共通の知人のいい話をする

であったり、

雑談は、生き物です。同じ話題をずっと続けるのは悪くはないですが、同じことを繰り返したり惰性的になったりして、だんだん盛り下がってきます。
話題がいろいろな方向に広がる、あるいは思いもよらない展開になるのが、雑談の魅力です。1つの話題にこだわるのは、雑談の楽しみを消すことと同じです。
「ちょっとこの話題に飽きてきたかな」
自分自身、また相手についてもそのように感じたら、話題を少しずらしていきます。

といった具体のアドバイスもあちこち散りばめてあるので、しっかりと吸収すれば、雑談の名手になれる(ような気がします)

【レビュアーからひと言】

不定形で、とりとめのないところから、今まで余計もの扱いされてきた「雑談」というものが、知識や推論の速さでは、人間をはるかに凌駕するAIの存在が身近になったせいか、重要度の度合いが急に増してきた様子である。
かっちりとした積み上げ方式の仕事を至上としてきた旧来のビジネスマンには、ちょっと抵抗もあるかもしれないですが、AIが人間を超える「シンギュラリティ」の到来もだんだん近づく中、AIに負けないための、新しいビジネス・スキルとして見直してみてはいかがでありましょうか。

最高の雑談力: 結果を出している人の脳の使い方
最高の雑談力: 結果を出している人の脳の使い方

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