「大坂夏の陣」終わる。秀頼と織部の運命はどうなる ー 山田芳裕「へうげもの 24」

古田織部が豊徳和睦の最後の策であった、二条城での秀頼・家康会談が、織部の息子・古田山城守と大坂方による家康襲撃の陰謀が明らかになり、豊臣家が滅亡へと向かう、「大坂夏の陣」へとまっしぐらに進む1615年4月30日から、真田幸村はじめ有力諸将が討ち死にし、淀殿はじめ大阪方の首脳陣が自決した1615年5月8日の午後までが描かれるのが本巻。

豊臣家がぐらりと倒れるのと並行して、それが象徴する世界を根こそぎ引っこ抜いてしまおうとする家康派の、古田織部も家康暗殺に加担した疑いをかけて、一気に消し去ってしまおうという陰謀が動き出すところでもある。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二百五十二席 空に星があるように
第二百五十三席 Perfect Human
第二百五十四席 優しさにつつまれたなら
第二百五十五席 河内のオッサンの唄
第二百五十六席 SHALALA
第二百五十七席 CHERRY PIE
第二百五十八席 ブルーブルースカイ
第二百五十九席 Dear GOD
第二百六十席 どでかい青春
第二百六十一席 トドメを派手にくれ
第二百六十二席 New Bowl World

となっていて、家康襲撃の陰謀の黒幕となっていた、織部の息子・古田山城守重嗣が自害を図るところからスタート。彼の自害を止めて、秀頼親子の亡命の手配をするよう、屋敷から逃すのだが、

といったところをみると、これから自分をはじめ古田一族を襲う徳川の謀略を予期しての行動であったのだろうな、推察しますね。
このあたりに関係しては、織部の屋敷を薩摩の連歌師・如玄が尋ねていたことを聞いての

と言う表情に現れた家康派の過激さとセットで考えると、織部と大坂方を抹殺しないと治まらないのだな、と痛感するところですね。

ここで、「家康派」と今巻で表現したのは、この勢力が徳川全体のものではないということで、

と、古田織部の無実を家が危うくなることを承知で諫言する細川忠興や、織部の案をもとに作った具足と陣羽織で出陣する秀忠といった政権中枢にも家康派の動きに納得していない動きがある。
さらには、

という松平忠輝や

松平忠直のように、子どもや孫にもそうした勢力が広がっていて、ここらは、「へうげ」を忌み嫌う家康にとっては、かなり腹ただしいことであったでしょうな。

話のほうは大坂夏の陣の集結に向かって展開していく。家康の本陣めがけて一気に攻め込んで、一発逆転を狙う真田幸村も陣幕の中に隠した鉄砲隊に銃撃されて倒れるのだが、最後に

といった謎の言葉を残すのだが、この言葉の意味することは何か、それぞれに推理してみてくださいな。


そして、大坂城落城の場面は、淀君・大野治長・大蔵卿が城内で最後の茶席を催すところがクライマックス。
大野治長の

という言葉が、織田・豊臣がもたらした「時代」が終わりを告げたことを表現しています。腹を切って介錯して、といった武張ったものでないのが、織豊時代の「華」というものでしょうか。

【レビュアーから一言】

大阪城最後の茶席で、三人が茶菓子として食するのが

といったもの。利休の考えた「麩の焼き」というもので、今で言う「クレープ」でしょうか。現代なら生クリーム、当時は、甘い味噌を付けて巻いて食べるのが通例なのだが、この場面で、当時、武人が戦時に食べることを禁じられていた「河豚の肝」を味噌で和えたもので食しているのが、滅ぼる一族の最後の晩餐としてはなんとも意味深いですね。

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