Googleで人材育成や組織開発、リーダーシップ開発といった分野で活躍し、「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか」や「Google流疲れない働き方」などビジネスの効率化や「働き方」についての著述も多い筆者により、最先端の「リーダーシップ」論が本書。
最近、「リーダーシップ」については、従来の「リーダーが自らの信念・理念に基づいて、部下を強力に引っ張っていく」というスタイルが敬遠されて、部下の自主性や自発性を誘発させることを主眼とする「フォロワーシップ」が注目されているのだが、そもそも、リーダーシップとフォロアーシップを対立概念として考えるのはどうかな?、という気が当方にはしていて、そのあたりも含めて、「新しいリーダーシップの形」について示唆がもらえる内容となっている。
【構成と注目ポイント】
構成は
プロローグ 働き方が変わった
第1章 だれでもリーダーシップ
第2章 イノベーティブシンキング
第3章 プロトタイプシンキング
第4章 デジタルリーダーシップ
第5章 ラーニングアジリティ
第6章 コミュニティリーダーシップ
第7章 コンプレックシティリーダーシップ
第8章 エモーショナルインテリジェンス
第9章 マインドフルリーダーシップ
第10章 リーダーシッププレゼンス
となっていて、まず、こうしたリーダシップについての議論が起き始めているのは、やはりグローバリズムをはじめとしたビジネス環境の変化で、それに対応するための組織の在り方として、筆者の認識では
チームのメンバー1人ひとりがリーダーシップを発揮することだと僕は考えています。全員がリーダーシップを発揮する組織、誰でもリーダーシップがとれる環境が、変化の激しい時代に求められる組織のあり方
ということのようで、それにともなって
リーダーシップはトレーニングによって鍛えることができる能力であり 心構え です。伸ばそうと思えば伸ばすことができるという意味で、生得的な資質とは違います。その気になれば、誰でもリーダーシップを身につけることができます。 もっと大きな間違いは、リーダーシップを発揮するのは リーダー だという暗黙の前提
と、今までのピラミッド型の上位下達的な、組織論・リーダーシップ論の否定に結びついていくのだが、けして、それはメンバーがリーダーに対する自由な行動ができることだけを意味しているのでは、リーダーシップの発揮がメンバー全員に求められることによる、自らの意見表明と方向性を示す義務と、それを他のメンバーやリーダーに「納得」させないといけない、という今までとは異なる役割と義務を負うものであることは認識しておかないといけなくて、
グーグルには、勤務時間のうちの2割の時間を使って本業以外のプロジェクトに取り組んでいいという、有名な「 20%ルール」があります。 「時間内に自分の好きなことに取り組めていいですね」とうらやましがられることが多いのですが、グーグルは 80%の時間で130%くらいの成果を求められる猛スピードの会社だから、実は、全然余裕はありません。本業で130%の成果を求められ、それに加えて 20%分の新しい取り組みをしなければいけない
であったり、
自分の行動でロールモデルをつくる。毎回空気を壊して質問し続ける彼の姿に共感した新入社員たちがそれを真似る。信念を持ってやり続ければ、後からフォロワーがついてくる。これも立派なリーダーシップの形
といった風に、結構ハードなものであることは間違いないようだ。
そして、本書では、こうした「リーダーシップ」観の変化に伴って、仕事のスタイルであるとか、スキルアップの仕方とかも当然変化をすることになるのだが、本書では、その具体的な手法であるとか能力の磨き方も展開・アドバイスされているのが親切なところ。
それは、例えば、破壊的イノベーションを生み出すためのエクササイズ・手法として
①もの同士のつながりを考える
② 別世界からアイデアを持ってくる
③ルールを破る
④違う人の視点で問題を見る
の4つが示されて、それぞれについて解説されていたり、
いきなり完成品を提示するのではなく、試作品であるプロトタイプの段階で見せることで反応を集め、それをベースに試行錯誤を重ね、最短距離でゴールを目指す思考法であり行動パターン
である「プロトタイプシンキング」や
最近耳にすることの多くなった、新しい環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく能力である「ラーニング・アジリティ」を身に着けるうえで大事なのは
日本で「ラーニング」と言うと、英語の「スタディ」、つまりテキストを用いて専門知識を習得する学習に近い感じがありますが、ラーニングアジリティはもっと広い概念です。 目の前で起きているどんな些細なことも見逃さず、何でも試してみて、すぐに覚える。まだ凝り固まっていない子どものような柔軟さと、何にでも興味を持つ旺盛な好奇心。求められるのはむしろ、子どもの視点
といったアドバイスには斬新さを感じますね。
【レビュアーからひと言】
「リーダーシップ論」や「リーダー論」というと、とかく、「これしかない」といった議論に陥ってしまいがちなのだが、本書のように、リーダーだけでなく、メンバーにもリーダーシップを身近な能力とすると
誤解されがちなのは、リーダーらしさが必要といっても、入試問題の正解のように、ただ1つの「正しいリーダー像」があるわけではないということです。むしろ、人の数だけリーダーらしさがあると言ったほうがいいかもしれません
といったように、もっと柔らかく「リーダーの在り方」「リーダーシップの発揮の仕方」というものを考えたほうがよいようだ。
大事なのは、柔軟性です。状況は刻々と変わるし、自分の感情も、まわりの人たちの感情もどんどん変わります。いまこの瞬間に注目して、その時点でのベストを探る。それこそ、正しいリーダーシップのあり方
といったアドバイスを念頭に、自分なりの「リーダーシップ」論をもう一度考えてみるべきなのかもしれませんね。
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